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‘王者’の銘血が日本に上陸!
古谷 正鳩舎(埼玉草加連合会)

写真●POPPO.NET/古谷 正 取材・文●POPPO.NET

プロス=ローザンの最高傑作にして遺作‘ターザン’、そしてベルギー屈指の長距離フライター・デヌヴーの代表鳩を導入し、2012年秋から勝負をかける古谷 正氏。

▲プロス=ローザンの最高傑作にして遺作‘ターザン’、そしてベルギー屈指の長距離フライター・デヌヴーの代表鳩を導入し、2012年秋から勝負をかける古谷 正氏。

コンピューターラインで有名なプロス=ローザンの遺作にして最高傑作‘ターザン(ブールジュⅡN9位&14位他3回優勝)’が、堂々日本上陸! 「王者」の名前を冠するこの銘鳩を幸運にも手にできたのは、日本屈指の鳩レース王国・埼玉草加連合会で戦う古谷 正鳩舎。「本物」を求めたが故の導入であった。
またベルギー長距離界の名伯楽、イヴォン=デヌヴーの代表チャンピオンの1羽‘ブロンズ(ペルピナンN9位)’、そして彼のラインで構築された2009年マルセイユN2位鳩のトレードにも成功。今後、埼玉鳩界――いや日本鳩界を席巻できるポテンシャルを秘めるこの3羽の王者を紹介する。


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プロス=ローザンの歴史=異血との出会い
2010年8月11日、世界鳩界をリードしてきたベルギーの鳩界大使ことプロス=ローザンがこの世を去った。目下中距離レースを得意とし、ブールジュN優勝や中距離プロヴィンシャルエースピジョン賞など華々しい翔歴を持つ国内屈指の競翔家だ。フライターとしてプロフェッショナルな姿勢を持ち、作出から競翔に至る全てのテクニックを研究。また戦力の強化として異血――種鳩の導入にも余念がなかった。彼は「必勝法は鳩質」と公言しているように、とりわけ後者を重要視。彼の偉大なる軌跡は異血との出会いの歴史といって過言ではない。
その始まりはルーキー時代に遡る。父から継承した自鳩舎の飛び筋を活性化させるため、‘モナリザ(1973年バルセロナIN優勝)’を母に持つカレル=カーレンスの代表鳩‘ファビオラ(1973年バルセロナIN8位)’を導入。その他にヴァンスエーヴェルトのアイザレン、そしてグロンドラースの銘血――スピード血統を揃え、この異血3系統を駆使し1979年~1983年までエースピジョン賞を獲得し続けた稀代の銘鳩‘スーパークラック327’を誕生させている。
‘スーパークラック327’は種としても秀逸で、このCHブリーダーの出現によりプロス=ローザンのレーシングチームは充実一途を辿る。がしかし「勝利至上主義」を貫く彼は、1つの血統に固執することはなかった。

次に出会ったのは純然たるスピード血統・ソーンチェスである。
かの翔聖・岩田誠三氏が異血として採用し、成功を収めた筋として知られる銘系統。プロス=ローザンは1982年に直接ジェフ=ソーンチェスの下を訪れ導入している。トレードした理由に ついて、スピードではこのトリに敵わないと痛感したからと後に語っている。
そして異血――ソーンチェス同士でクロスして生まれたのが、後にプロス=ローザン、そして世界各地でブレイクすることとなるスプリントチャンプ――KBDBのエースピジョン賞をそれぞれに獲得した‘コンピュータⅠ’と‘コンピュータⅡ’である。

プロス=ローザンの歴史は優れた異血との出会いの歴史でもあった

▲プロス=ローザンの歴史は優れた異血との出会いの歴史でもあった。


プロス=ローザン3大代表チャンピオンの1羽――ターザン
ソーンチェスとの邂逅により、‘スーパークラック327’の血はコンピューターラインと名を変え、ブールジュN優勝、BDS中距離エースピジョン賞1位などあまたの中距離チャンピオンを輩出。その威力を加速させ、プロス=ローザンの強さをより磐石なものにさせる。しかし先述のとおり、現状に甘んじないのが彼のスタイルだ。ゆえにその後も銘種鳩及びチャンピオンを精力的に導入。中でも‘フレディ(FREDDY) ’と‘ド・シャトロー(DE CHATEAUROUX)’との出会いは、晩年のプロス=ローザンを支える大きな存在になった。
この2羽はあまりにも有名なため説明不要かもしれないが、簡単に紹介しよう。‘フレディ’は、作出専門鳩舎・ド・ロウ&フランス=サブロンがフレディ=ファンデヒーデから導入したトリ同士で配合して作りだした生粋のブリーダーであり、直子にオランダ最強フライターの1人、コープマンの最高種鳩‘デン・ドローマー’と‘ミスターエクスペンシヴ’、孫には‘ラッキー77(2005年KBDB長距離ナショナルエースピジョン賞1位)’と‘ドラン(2007年オルレアンN9,670羽中優勝)’。ひ孫に‘ミス・マニワン(2007年サンバンサンNPO最高分速)’と活躍に枚挙がない。凄まじき威力であるため、世界最高ブリーダーの1羽に数えられている。

晩年のローザン鳩舎2大看板極鳩‘ド・シャトロー’

▲晩年のローザン鳩舎2大看板極鳩‘ド・シャトロー’

一方、‘フレディ’ほどの派手さはないものの‘ド・シャトロー(シャトロー・プロヴィンシャル優勝)’も短・中距離をベースに活躍鳩を多数輩出。‘ド・シャトロー’の娘に‘フレディ’をぶつけ、‘ブラウエ・プリンス2005年ブールジュN4位、2006年同レースN11位)’というチャンピオンを誕生させるなど、数々の成功を収めている。それゆえこの2羽を絡ませる配合がヨーロッパやアジアの愛鳩家たちの中で流行。一時はこの配合に5,000ユーロの値段がつき、世界を驚かせた。
プロス・ローザン自身としては飛ばし屋であるがゆえか、とりわけ‘ド・シャトロー’を重宝していたと聞く。種にしろ、選手にしろ自身で使うトリは‘フレディ’よりもコンピューターラインが主役でこの配合式で生まれた‘ター


ザン(2005年ブールジュ(Ⅱ)N9位、2004年同レースN14位)’と‘フリッツ(2005年ブールジュ(Ⅰ)N8位)’は、先述の‘ブラウ・プリンス’と並び、プロス=ローザン晩年の「3大代表チャンピオン」として知られている。とりわけ‘ターザン ’は他2羽同様マークの常連だが順番は常に上の方で、大活躍した2度のブールジュとも第1マークを任されていた。いかにロス=ローザン自身が‘ターザン’に信頼を寄せていたことがわかるエピソードである。しかも ‘ターザン ’の直子を13羽もストック。プロス=ローザンは、今まで何度も「種鳩の成功」を当ててきた男である。これだけの羽数を残しているということは、‘ターザン’が銘種鳩に――父の後継鳩になれる可能性が高いということである。

[2 へ続く]


SUPER CHAMPION BREEDER

王者の名を持つプロス=ローザン最高傑作
ブールジュ(Ⅱ)N14位&N9位
TARZAN(ターザン)
B03-5115302 BC ♂ プロス=ローザン作翔
プロス=ローザン最高種鳩 現・古谷 正鳩舎種鳩

2006年 ナンチュール 2,270羽中2位(229羽中優勝)
  シメイ 493羽中8位
2005年 ブールジュ(Ⅱ)N 9,893羽中9位(110羽中優勝)
2004年 ブールジュ(Ⅱ)N 14,207羽中14位(301羽中優勝)
  ナンチュール 3,311羽中8位(511羽中優勝)
  メルン 1,719羽中4位(237羽中優勝)
  シメイ 321羽中4位
 
全兄弟/メルンProv,優勝、シメイ優勝他
父) ド・シャトロー B92-6451510 DC ロマン=シュホッツ作翔 プロス=ローザン最高種鳩
シャトローSN12,914羽中4位(Prov.4,080羽中優勝) ブールジュN18,657羽中14位(223羽中優勝)
オルレアン1,221羽中9位(44羽中優勝) ヴィエルゾンProv.3,733羽中6位
直子/フリッツ(ブールジュN8位) ジョーカー(ブールジュN14位)
孫 /ブラウエ・プリンス(ブールジュN4位、11位) ファンタスト(ブールジュN11位)
祖父)B91-6325915 BCW
祖母)B89-6270437 DC ヤンセン兄弟作

母) B97-5204431 プロス=ローザン作
同腹/ブールジュマン(ブールジュProv.優勝) 全兄弟/オルレアン(オルレアンProv.優勝)
祖父)コンピューターⅡジュニア B92-5040349 プロス=ローザン作翔 優勝7回の代表鳩
コンピューターⅡ(1979年KBDB短距離プロヴィンシャルエースピジョン賞1位)の直子
祖母)B91-5050157 ラケット(BDS誌エースピジョン賞1位)の娘
コンピューターⅠ(KBDBエースピジョン賞)の孫

少なくともプロス=ローザンにはその青写真が出来上がっていたはずだ。
しかしその時を待たずして、彼はこの世を去ってしまう。ブリーダーとして未完の大器となってしまった‘ターザン ’。だが実はこの銘鳩、日本にいる!昨年1月8、9日に行われたピジョンパラダイス主催のトータルオークションで、ある日本人によって落札されたのだ。ある日本人というのは、埼玉連盟の草加連合会に所属する古谷 正氏。実に312,000ユーロ(約3,500,000円・税抜)で獲得に成功する。
導入時すでに8歳であったが、生命力に溢れた力強いフォルムは現役レーサーと言われてもおかしくなかった。血統構成は‘ド・シャトロー’、コンピューターラインと、スピード性を追求したものになっているが、‘ターザン’自身は若干長手の為、スプリンターという印象は受けない。ボディバランスは抜群でその立ち姿と表情に愛称通り、「王者」の貫録が伺える。加え柔軟な筋肉も搭載しており、回復力も期待させてくれる。使翔者次第ではあるが、関東であれば充分1000Kまで戦えるタイプかもしれない。‘ターザン ’自身ブールジュで2度活躍しているが、優勝分速について2004年は1,215メートル、対し2005年が1,582メートルとそれぞれ展開が異なる中で結果を残している。つまり実力戦、高分速どちらも対応できるということ。
偏らない強さこそ本物の証であり、‘ターザン’はそれを兼ね備えた真の王者であった。


ワロン地区最強ロングフライター――イヴォン=デヌヴー
「だから導入しようと思いました」。
古谷氏は2006年にデビューし、いきなり400K東地区5位、そしてRgでは総合12位! 以降も2009年まで連続総合2桁入賞と、順調なフライター人生を歩んでいた。がしかし、2010年春、価値観を全く変えてしまう出来事が起こる。
地区N全滅――。
「中距離でシーズンを終えるなんて初めてのこと。ショックでした」。

ワロン地区で戦うイヴォン=デヌヴーは、1979年にKBDBナショナルチャンピオンに選出された他、近年ではIAPAで1位と3位を獲得。日本では無名だが、欧州ではベルギー長距離界の名伯楽として有名である。

▲ワロン地区で戦うイヴォン=デヌヴーは、1979年にKBDBナショナルチャンピオンに選出された他、近年ではIAPAで1位と3位を獲得。日本では無名だが、欧州ではベルギー長距離界の名伯楽として有名である。

今までの鳩作りを全て否定されてしまったような気がした。悩んだ末に辿り着いたのが、種鳩陣の入れ替えであった。古谷氏は今までのような銘血バードや有名鳩の代落ちではなく、チャンピオン自体の導入に走る。それも単なる一発屋ではなく、何度も来るエースピジョンタイプ。かつ使翔者の期待に応えた――マーク鳩であるかどうかを選定の基準に設けた。つまり「真の王者」を求めたのである。むろん、プロス=ローザンの遺作‘ターザン’は、古谷氏の理想と完全にマッチ。実際に手中に収められるかできるか別として、導入に踏み切ったのは必然だったのだ。
かくにも‘ターザン’のトレードに成功したが、古谷氏の本物を探す旅は終わらない。‘ターザン’が中距離の王者なら長距離の王者――イヴォン=デヌヴー(YVON=DENEUFBOURG)のチャンピオン鳩を求める。イヴォン=デヌヴーといってもピンとこない方が大半であろう。彼はマルク=ローセンス、レイモンド=コブ―といった日本で馴染み深い強豪と同じワロン地区に所属。長距離レースにおいて地元では知らぬ者がいないほどの強豪であり、2007年にはピジョンパラダイスが独自で集計している長距離ランキング(IATP:対象レースはバルセロナ、ペルピナン、タルブ、ポー、マルセイユ)で1位を獲得したこともある(2009年は3位)。ワロン地区


のみならず、ベルギー長距離界においても名伯楽であった。ちなみに同地区で戦う宮下 博氏も彼の偉大さを自身のホームページで紹介している。
さて彼の鳩はというと、オランダの長距離鳩を系源としそれに先述のマルク=ローセンスやレイモンド=コブ―、そして現在世界で最も活躍しているとされるジョルジ=カルトース作の血統――ワロン地区の飛び筋を流し込んで形成されたものだ。代表鳩は‘ル・ベジエ(2001年ベジエN優勝)’。現在、デヌヴー鳩舎の源鳩的存在であり、この血から数々のチャンピオンバードが輩出されている。中でも一際輝くのは‘ル・ブロンズ(LE BRONZE)’と名付けられたエースピジョン。基礎カップルの直子にして‘ル・ベジエ’のベストパートナである‘ル・ブロンズⅠ’の孫でもあるこの1羽は、ペルピナンIN11位(N9位)、マルセイユで5年連続入賞を果たし、2009年IATP3位の原動力にもなったチャンピオンである。しかもナショナルレースにおいては必ずといっていいほどデヌヴーがマークに選んでいたエース的存在だ。2011年、古谷氏は幸運にもこの銘鳩‘ル・ブロンズ’のトレードに成功(推定9,000ユーロ)する。
さらに作翔者は違えど、両親がデヌヴー作のマルセイユ(2009年のマルセイユN2位・推定300万円)までも導入。悔しくも資料不足でマーク鳩だったかどうかを知ることはできなかったが、ナショナルレースで10%内入賞が3回、1%内入賞が2回と明らかにエースピジョンである。一発屋ではないこのチャンピオンバードは、古谷氏のルールを充分すぎるほどクリアしていた。
中距離の王者に長距離の王者――。「本物」が古谷鳩舎に現れた。果たして日本屈指の鳩レースのメッカ・埼玉草加連合会で、かつ埼玉連盟でいかなる成果を見せてくれるのだろうか。ちなみにデヌヴーのラインは、2012年春難戦となった埼玉GPで埼玉草加連合会のダービー優勝に輝き、すでに活躍し出している。‘ターザン’、‘ル・ブロンズ’に‘マルセイユ’。この3羽の王者の末裔が本格始動する2012年秋、そして2013年春に注目である。(了)

IAPAとは、バルセロナ、ペルピナン、タルブ、ポー、マルセイユの長距離5レースの成績を競いあうタイトル。上記はデヌヴーが1位を獲得した2007年の結果表。自己申請制度ではなくPIPAが独自に集計している。そのため公平であり、純粋な強さを現してくれる。デヌヴーは2009年にも3位を獲得している。

▲IAPAとは、バルセロナ、ペルピナン、タルブ、ポー、マルセイユの長距離5レースの成績を競いあうタイトル。上記はデヌヴーが1位を獲得した2007年の結果表。自己申請制度ではなくPIPAが独自に集計している。そのため公平であり、純粋な強さを現してくれる。デヌヴーは2009年にも3位を獲得している。


SUPER CHAMPION BREEDER

ペルピナンN9位、5年連続マルセイユ入賞!
計長距離Nレース16回優入賞のスーパーCH
LE BRONZE(ル・ブロンズ)
B05-9107324 DC ♂ イヴォン=デヌヴー作翔 古谷 正鳩舎種鳩
2009年 ペルピナンIN18,354羽中11位
(N 7,634羽中9位・FCH1,668羽中優勝)

マルセイユIN11,833羽中528位(N3,586羽中209位)
2008年 マルセイユIN13,938羽中404位(N4,000羽中120位)
※マルセイユ2007年、2010年、2011年入賞。計長距離N16回優入賞
父)ベロア B99-916486068 同腹/ブールジュN12,166羽中2位
祖父)ル・ルイ・ブラック B98-9139744 デヌブー作翔
ブールジュNZ9位、リモージュNZ13位他
祖母)B98-9130697 ブールジュN2位
母)エクセレンス B04-9001344 デヌヴー作
全兄弟/ペルピナンN5位
祖父)ル・ベジエ B99-9164341 デヌヴー作翔
2001年ベジエN6,522羽中優勝
全姉/下記ル・ブロンズⅠ
祖母)ル・ブロンズⅠ B97-9095083
全弟/上記ル・ベジエ
巨匠・デヌブーから生まれたチャンピオン
マルセイユN2位他上位入賞多数
マルセイユ
B05-9106173 BC ♂ ドゥモンソ父子作
ドゥモンソ&パフォンセリ共同鳩舎使翔 古谷 正鳩舎種鳩
2009年 マルセイユIN11,833羽中23位(N3,586羽中2位)
オランジェN5,237羽中51位
モンテリマールN8,232羽中735位
2008年 モンテリマールN8,634羽中 26位 マルセイユIN13,939羽中1,271位
2007年 ブリーブN16,007羽中560位
父)B01-9079395 デヌヴー作 ル・コピーの直子
直子/ベジエN8位 姉妹/マルセイユN3位の母
母)B04-9156355 デヌヴー作 ル・ポーの娘

■古谷 正鳩舎(埼玉草加連合会)
 〒340-0017 埼玉県草加市吉町5-3-3 Tel:048-922-2206 e-mail:jdsl678678@yahoo.co.jp


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