“希望”が運んだ後継鳩舎としての宿命 久保康徳鳩舎

“希望”が運んだ後継鳩舎としての宿命 久保康徳鳩舎
■久保康徳鳩舎(ニュー盛岡連合会)
〒028-4211 岩手県岩手郡岩手町川口9-3 ℡:090-4639-7807
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東北に㋖系あり。1960年代、金野正家氏が形成したこの飛び筋は、系源であるファンブリアーナの“唯一羽帰りの連鎖”を象徴するように長距離レースで“切れ味”を発揮。最後の切り札として、1000K攻略のフロンティアとして活躍してきた。系統の威力は、後継鳩舎・伊達順一氏の下でさらに磨かれていき、3代目・菅原一典氏へと継承。2008年、「ザ・サード」菅原氏のレース中断により、㋖系を継承した久保康徳氏は、4代目として、㋖系の宿命ともいうべき「最長距離攻略」に挑むも結果は出ず…。唯一それに近づいたのは、1000K記録鳩の“久保㋖ホープ”であった。そして今春、この1羽が名前の通り希望をつなぐ…!

㋖系の源鳩・切り札号。

㋖系の源鳩・切り札号。

切り札系――いわゆる㋖系は、1960年代に宮城県気仙沼の競翔家・金野正家氏が形成した飛び筋だ。源鳩は系統名となった“切り札号”。小野寺勝郎氏作翔のメスで、300K6位、400Kで10位に入賞したCHである。「紫に近い銀目」、「太いアイサイン」、そして「動作が機敏」というのが“切り札号”の特徴。血統は4分の3が「ファンブリアーナ系」で、なおかつサンセバスチャンIN当日唯一羽帰り優勝鳩“ターザン”(*源鳩“オードスチール”の孫)の近親鳩だ。箱根越えさえ厳しかった時代に1000K開拓の先駆として活躍してきたことで、地元鳩界では「最後の切り札」と高く評価。このフレーズが前述の名の由来とされている。 さて㋖系は金野氏のモットー「友心一鳩(*鳩を愛する仲間が1つの気持ちになって友達を大事にしよう)」を受け、東北地方を中心に数々の愛好家を生んだ。うち最も華々しい戦果を上げ、㋖系の名声を高めたのが、青森県三戸に鳩舎を構える伊達順一氏(青岩)である。とりわけ1200K以上となるGNでの勝率は高く、連盟優勝2回の超銘鳩(*“CH㋖シロ号”)までも誕生させたことは有名だ。華々しい実績から㋖系の後継鳩舎と評価されている。 2008年、久保康徳氏は先輩・菅原一典氏(元・盛岡)のレース中断に伴い、戦力のほぼ全てを継承した。菅原氏は伊達氏に師事をし、㋖系で数々の栄光を手にしてきた、いわゆる「3代目」。トレードされた種鳩の中には、“超㋖クイン号”や“㋖逆風クイン号”といった看板鳩まで含まれており、手に入れた素材で見れば明らかに四代目のそれであった。

ところが久保氏の十八番は中距離である。スタイルと正反対ということもあり、㋖系の覚醒に苦悩する日々が続いた。同氏は2009年に菊花賞を制し、その直仔で2015年のGPで総合優勝を果たしている(*close up参照)ものの、この2羽はそもそもの本筋・フェルストラーテ系――〝エルビス〞の血での成果…。2014年に「2代目」伊達氏からKBDB会長賞連盟1位に選出された“伊達㋖リザ号”を導入しさらなる強化を試みるも、㋖系での際立った成績は、前述の〝超㋖クイン号〞の「直仔×孫」、〝CH㋖シロ号〞の近親交配で作られた10年生まれによる桜花賞2位だけに止まっていた。 しかしこの唯一のCH“久保㋖ホープ号”は、㋖系の系源「ファンブリアーナ」の特性ともいうべき切れ味の体現者として大覚醒を果たす。2019年にラインブリードで作られた孫が、同じ㋖系愛好家の先輩・吉田賢二氏(盛岡)の下で桜花賞“唯一羽帰り”総合優勝を実現すると、2021年にはなんと3羽の“唯一羽帰り”を輩出。うち1羽は久保氏の東北東ブロック連盟GN“翌日”唯一羽帰り総合優勝だ。なお同ブロック連盟においてGN成立は少なく見積もっても11年ぶりであり、また「山口県長門」――日本海側に放鳩地を移動させてからは初、つまりは歴史的快挙というわけである。

切り札(㋖)会の仲間たちのおかげで、後継者としての宿命ともいうべき1000K超のレースを制した。

切り札(㋖)会の仲間たちのおかげで、後継者としての宿命ともいうべき1000K超のレースを制した久保氏。前列左が二代目の伊達順三氏。後列右から三代目の菅原一典氏、吉田賢二氏、大塚哲司氏。

金字塔を打ち立てた“久保㋖グランド号”は“久保㋖ホープ号”の直仔で、同じ系源となる“陸中キング号”、“R・CH㋖怪物号”の血が流れる“R・CH戸田007号”との異種同系交配によって作出。これは前述の吉田氏の成功を参考にしての配合式だった。なお“久保㋖ホープ号”は、時計トラブルさえなければ連盟の2位だったとの由。その時の無念もあり、直仔、孫で飛ばしたいという熱い気持ちを胸に秘めていた。ゆえに“直仔で”しかも“GN唯一羽帰り”でリベンジを果たせたことは、無上の喜びとなったことは言うまでもない。 また先代2人から㋖の看板鳩までも継承しながらも、長く結果を出せなかったことでプレッシャーを感じていたという久保氏。今回の勝利でこれまで抱いていた四代目としてのコンプレックスからも解放された。このようにさまざまな感情が交差する会心の勝利だったというわけだが、最も強いのは感謝の念とのことだ。 「配合は吉田さん、管理では今回のGN総合優勝鳩の母親を貸して頂いた大塚(哲司)さんに大変お世話になりました。そして伊達さんをはじめとする㋖切り札会の諸先輩たちにも。本当にありがとうございました」。 形成者の信念「友心一鳩」によって、久保氏は四代目として㋖系の宿命を乗り越えた。そして希望という名のスーパーブリーダーの誕生により、㋖の物語の新たな主役として活躍してくれるであろう。

2021年東北東ブロックGN翌日唯一羽帰り完全総合優勝

久保㋖グランド号
19OK08342  BCW  ♀  久保康徳鳩舎 作翔
2021年東北東ブロックGN20羽中総合優勝(実距離1,082.395K/分速922.082m)
19OK08342

Father Grandfather
久保㋖ホープ号
10OK24251 BP ♂ 久保康徳鳩舎作翔
12年岩手連盟桜花賞1000K2位
孫/21年東北北部ブロックGN
   南部連盟翌日唯一羽帰り総合優勝
  21年東北北部ブロックGP
   南部連盟翌日唯一羽帰り総合優勝
曾孫/19年南部連盟桜花賞唯一羽帰り総合優勝
05BE02947 B 菅原一典鳩舎作
CH㋖シロ号(83年&85年東北北部ブロックGN1200K連盟優勝)の直仔掛け×
超㋖クイン号(02年東北北部ブロックGN連盟唯一羽帰り優勝)
孫/“㋖クインホープ”(15年桜花賞1000K2位)
Grandmother
久保㋖No.5 B 久保康徳鳩舎作
超㋖クイン号の直仔×CH㋖シロ号の曾孫

Mother Grandfather
07BA03876 BC 戸田鳩舎・伊藤鳩舎共同 作
元・大塚哲司鳩舎種鳩
直仔/“㋖桜号(” 16年青森連盟桜花賞総合2位)
R.CH戸田007号 01BA05007 B 戸田広光 鳩舎作翔
07年東北北部ブロック連盟エースピジョン賞1位
下関GN1200K総合4位、600K優勝、500K優勝2回他入賞多数
“R.CH㋖怪物号”の直系
Grandmother
06LK18375 BC 伊藤 斉鳩舎作 北野雅雄鳩舎使翔
07年千葉東連盟桜花賞1000K総合6位
母/96年北陸ブロック連盟稚内GN総合3位×純岩田系