再開3年で2年連続のシンデレラストーリー 植木清三郎鳩舎

再開3年で2年連続のシンデレラストーリー 植木清三郎鳩舎
■植木清三郎鳩舎(新潟第一連合会)
 〒959-2045 新潟県阿賀野市里1520 Tel 090-2538-6536 e-mail.ueki.seizaburou@wing.ocn.ne.jp

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かの世界的フットボーラー・中田英寿は準備の男と呼ばれ、日本代表にしろイタリアに移籍後にしろ、「何を求められているのか」を熟知してから臨んだため、フロンティアとして大きな成功を収めた。植木清三郎氏も“準備の男”だ。鳩レースの再開に向けて、きちんとした準備を行い、わずか2年目で自身二度目となる総合優勝を果たした上、なんと全国制覇までも体験。2018年春もこの勢いは止まらず、シンデレラストーリーは再現された。

入念の準備でいざ鳩レース再開

1994年に高松宮杯で初の総合優勝を経験をし、2000年代初頭には更なる飛躍を目指して福江桜花賞の総合優勝鳩やピート・マンダース作翔のRg総合優勝鳩(純ヤンセン系)を導入するなど(*詳しくはレース鳩商店街)精力的に基盤となる種鳩を集めていた植木清三郎氏。これから、というタイミングで勤務時間の関係により、鳩レースを中断せざるを得ない状況になってしまう。しかし同氏の鳩レースに対する熱は冷めることなく、全国著名愛鳩家の集い(椿山荘)、鳩協総合表彰式(品川プリンスホテル)といった鳩レース界最高のセレモニーに足を運び、再開へのモチベーションを維持、高めていた。その一方で、地元鳩界最強と謳われる長谷川 傑氏(日本海)の下に足を運んでは、管理法、配合論についてヒアリング。結果に直結するような知識も自身に落としこんでいったわけだが、「365日鳩」というスタイルを持ち、短期間で最強の座に登りつめた長谷川氏とあって、やはり学ぶべきところは多かったようだ。

「長谷川(傑)さんといえば、その強さに目がいきますが、帰還率もずば抜けています。(*長谷川氏はレース鳩帰還率賞全国1位他同賞の常連鳩舎)私の場合、勝つことと帰還率の良さは関係ないと思いこんでいたので、鳩レースに対する考え方自体が変わりましたね」。

仕事を退職し、鳩レースを本格的に再開できたのは2015年だった。それまで準備をしてきたことで、中断前とは異なり帰還率については上々だったものの、際立った成績を残すことはできず、翌春も記録できたのがGPまで。更なる飛躍を求め改善点を模索していたところ、長谷川氏との何気ない鳩談義から「勝負のレース以外は抑えることが重要。人間がレースモードになってはいけない」という言葉にヒントを得て、植木氏はターゲットを“連盟主催の最長レース”桜花賞に絞り、その一戦のみ仕掛けることにする。

「とはいったものの事前のレースを全て“抑える”というのはホントに難しかったですね。勝てないレースが続いていくもので、このままいいところなしでシーズンが終わってしまうのでは、という不安がすごかった。途中でいじってしまおうか、と何度思ったことか(笑)」。

今年の鳩協総合表彰式で衆議院議長賞全国最高分速の表彰を受ける植木清三郎氏(右)

今年の鳩協総合表彰式で衆議院議長賞全国最高分速の表彰を受ける植木清三郎氏(右)

しかし耐えに耐え、運命の桜花賞を迎えると…。なんとベストテンに4羽入賞を果たし、うち自鳩舎トップはなんと総合優勝! しかもそのトリの叩き出した分速は1700メートルを大きく超え、なんと衆議院議長賞の全国最高分速までも手にする。再開後初の総合優勝が全国優勝というシンデレラストーリーを体現した“ウィナースワン”こと「16FF02023」は、前述の長谷川氏の飛び筋(*D&マタイス系、リーンブーア系、モスキート系、ゴーラン系などで構成された柴野 徹鳩舎の飛び筋)に植木氏が中断前より温めてきたヤンセン系(“プルト”の孫)をクロスして作られたもので、自身にとっての今昔が詰め込まれた会心作であった。

福江GNで当日唯一羽帰りの完勝!

再開わずか2年で桜花賞のみならず900K以上のレースで全国制覇を成し遂げたその勢いは、2018年春も続く。自鳩舎の飛び筋として愛用するA&Kロフトのライン(*アールデン系、勢山系、髙橋ファブリー系など)と北陸の雄・海老利明氏(富山連合会)が形成した「海老稚内系」とで作られた1羽がRgで総合10位に入賞すると、地区Nでは見事総合優勝! 「総合優勝すると近いうちに2回目がある」という勝利の循環をわずか1年で体現させた。なお「翔んで我が家の住所、里に帰って来る」という意味で名付けられたニューヒロイン“翔里005”は、前述の翔歴から会長賞に選出されている。

「今春も長距離が狙いだったもので、中距離は鳩なりの調教、軽めの餌で調整を行っていたのですが、ついつい周りに刺激を受けてしまった…。本来なら行く予定でなかった訓練にいってしまい、逆にこれがプラスに働いたのかな、と」。

果たして中距離と長距離の花形レースをそれぞれ制した植木氏だが、地区Nで反応してしまったためか、桜花賞は総合シングルに1羽入るものの不本意な結果に。2週間以上あるインターバルで建て直しを図ると、GNでドラマが待っていた。なんと“当日唯一羽帰り”で総合優勝に輝いたのである。

「打刻したのは午後6時39分でした。GPのトップ帰還からわずか3分後の出来事だったので最初はGPのトリだと思いましたが、私製環の色でGNに出したトリだとわかりまして。ちょうどその時、長谷川さんと電話で話をしていたのですが、よかったねと言ってくれたし、A&Kロフトさんからもおめでとうのメールが届きまして、ホントにうれしかった。とはいえ、帰還直後でのおめでとうだったもので、逆転もなくはない時間帯ですから。不安の方が大きかったというのが本音ですね」

しかし結果は、前述の通りの完勝劇である。鳩飼いにとっての“究極の勝利”と言われるGN総合優勝。しかも新潟鳩界のレースマンにとって聖地ともいえる「福江」からのGNである。ゆえに植木氏の感動は筆舌に尽くしがたい。

最高の名誉を植木氏にもたらしたヒーロー“浜名湖スワン”こと「16FF01714」は、2016年の4月生まれで2番仔。サイズは中の大で体型はやや長手だ。腰の厚みは薄く、筋肉は硬いと普通の間で重心はバランスが良いとされる中間。性格はおとなしい。配合面は父親が “バルセロナⅠ”(*1975年バルセロナN3位、1976年バルセロナN優勝)、“バルセロナⅡ”(*1975年バルセロナN2位)、“バルセロナⅢ”(*1976年バルセロナN3位)の全兄弟“ブルー号”と前述の“バルセロナⅡ”の直仔“クロス”らの銘血で構成された極上のカイパー兄弟系なのに対し、母方はブリュッヘマン兄弟の代表鳩“オルハン”と“ミラ”(*1994年バルセロナN8位/基礎鳩“オード62”の孫)の血で作られた最新マラトンチャンプ“ヤメルダ”(*2011年バルセロナIN6位)と、その同系にしてCH鳩“アンタラ”(*2007年バルセロナN21位・Prov.優勝)の血も絡めたこちらも極上な銘血バードだ。なお父方と母方の組み合わせで2016年に八郷国際鳩舎にてオリエンタルカップの全国優勝鳩が誕生している上、今回のGN制覇をはじめ長距離レースにおいて総合優入賞鳩をあまたに輩出している。両者は共に超長距離の銘系であることから、配合の狙いはむろん900K以上。鳩レースがブラッドスポーツであることを証明する、然るべきバックボーンだ。

「このトリは私ではなく、鳩友の高田 勇さんの作出鳩です。昨年桜花賞で総合8位に入ったもので、今年はGNのエースとして期待していました。帰還シーンは、最低限の旋回でスムーズに入舎したのですが、鳩舎内では水も飲まずにほとんど動かない状態でした。全精力を使いきったのかな、と思っていたところ、5分くらいたったら元気に飛び回りだしまして(笑)。掴んでみたら筋肉がほとんど落ちていなかった。長距離で2年連続上位にきているし、ものすごいトリだと思います」

3年という短い期間でシンデレラストーリーを2年連続演出した植木氏。再開組だったとはいえ、この快進撃は極めて異例だと言えよう。勝因はモチベーションや管理、そして戦力さえも入念に準備をしてきたことに尽きるが、植木氏の見解はやや異なる。それは、取材中何度も口にする長谷川氏、高田氏ら鳩友たちへの感謝――良縁こそが、“準備の男”を成功へと導いた最大の要因のようだ。

2018年羽越ブロック福江GN1100K当日唯一羽帰り完全総合優勝

浜名湖スワン
16FF01714 DC ♂ 高田 勇鳩舎作 植木清三郎鳩舎使翔
2018年春羽越ブロック福江GN141羽中総合優勝(実距離1102.764K/分速1451.324m)
2017年春新潟中央桜花賞146羽中総合8位(実距離922.525K/分速1726.766m)

16FF01714BC

Father Grandfather
3代目桜花賞号
14PE06344 BC
高田 勇鳩舎・吉田正徳鳩舎共同作
全兄弟/アスダイフ17号(三重CH総合7位、
        KBDB会長賞連盟3位他)
    北関東ブロック三地区GP連盟9位
全姉妹の直仔/18年東京ブロックGP連盟3位
桜花賞ⅡJr号
09DA23330 BC 吉田正徳鳩舎作
CRAZY BOY(03年上州400K総合優勝)の異母兄弟(下記
桜花賞Ⅱ全姉妹の直仔)×
桜花賞Ⅱ号(坂東野州桜花賞総合2位・カイパー兄弟系近親)
Grandmother
GN42号
09DA45607 BC 吉田正徳鳩舎作
GNカイパー1(西関東ブロックGN総合9位)×
42号(ドル号、カイパー兄弟系、ファンデウェーゲン系)
孫/アーネストウィッシュ
(16年八郷国際鳩舎オリエンタルカップ700K全国優勝)
Mother Grandfather
ヤメルダレジェンド756号
14DA18756 BC 吉田正徳鳩舎作
ゾーン・ヤメルダ
NL12-1468854 BC ブリュッヘマン兄弟作
アンタラの直仔×ヤメルダ(11年バルセロナIN6位)
直仔/アーネストウィッシュ
(16年八郷国際鳩舎オリエンタルカップ700K全国優勝)
Grandmother
ニューレジェンドガール号
11JH00112 BC 吉田正徳鳩舎作 遠藤 宝使翔
13年春中部ブロックGP700K総合優勝
孫/16年静岡東桜花賞900K総合優勝
  17年秋山梨Rg総合優勝

2018年春新潟地区N700K総合優勝&会長賞

翔里005
16FF02005 BC ♀ 植木清三郎鳩舎作翔
2018年春
新潟地区N653羽中総合優勝(実距離717.272K/分速1214.652m)
新潟Rg922羽中総合10位(実距離515.568K/分速1577.548m)
会長賞

16FF02005BC

Father Grandfather
14FB06779 B A&Kロフト作 12FB01462 B A&Kロフト作
全兄弟/柳勢火(08年羽越ブロックGP総合優勝)
Grandmother
一枝梅
10FB08697 BC A&Kロフト作翔
12年羽越ブロックGP総合優勝
08年羽越ブロックGP総合3位の娘
Mother Grandfather
14RA00588 BC 海老利明鳩舎作 サクラ197
11RA05197 BC 海老利明鳩舎作翔
13年春北陸北桜花賞900K総合優勝
08年北陸北地区N総合優勝&会長賞×13年同Rg総合優勝の母
Grandmother
09RA02387 B 海老利明鳩舎作翔
12年北陸ブロックGN総合18位、11年北陸北ダービー600K総合66位
07年北陸北桜花賞総合12位×06年菊花賞優勝

2017年度衆議院議長賞全国最高分速&新潟中央桜花賞900K総合優勝

ウィナースワン
16FF02023 BC ♀ 植木清三郎鳩舎作翔
2018年新潟中央桜花賞146羽中総合優勝(実距離922.525K/分速1766.558m)
*衆議院議長賞全国最高分速

16FF02023BC

Father Grandfather
12FF04188 BC 長谷川 傑鳩舎作
直仔/14年春300K総合4位、
   地区N総合29位、
   羽越ブロックGP連盟8位
11FF06923 BC 長谷川 傑鳩舎作
13年地区N総合20位、GP連盟22位
ゴールドエクセレントピジョン認定鳩の孫
Grandmother
10FF07686 DC 長谷川 傑作
Mother Grandfather
14FB04111 DC 植木清三郎鳩舎作 13FB05013 DC 白木朝雄鳩舎作
全兄弟/14年GP総合4位、13年春300K総合優勝
Grandmother
ド・リード・プルト
04ZA81966 B AAAロフト作
ヤンセン兄弟作ド・プルトの娘