40年振りに静岡鳩界で“東日本”制覇! 然るべき系統で築かれた伝説 野澤義徳鳩舎

40年振りに静岡鳩界で“東日本”制覇! 然るべき系統で築かれた伝説 野澤義徳鳩舎
■野澤義徳鳩舎(静岡県連合会)
〒420-0881 静岡県静岡市葵区北安東5-41-2 tel.054-247-1067

top-nozawa

この春、日本鳩界に一つの伝説が生まれた。東日本GNにおいて公称1200Kの最長距離である静岡鳩界で40年振りとなる総合優勝が誕生――! 歴史的快挙を成し遂げたのは、レース歴10年の野澤義徳氏(静岡県)だ。レジェンドメーカーである“レジェンド稚内号”こと「16PE01039」は、“中野長距離系”を始めとする静岡鳩界が誇る対1200K用に築き上げられた「超長距離系の塊」のような血統構成である。この伝説は奇跡ではなく、然るべくして築き上げられたものであった。

夢の最長距離帰還を夢見て再開! 選んだ戦力は対1200Kの飛び筋

国内最長距離レースであるGNは、「より遠くから」をテーマに発展してきた日本鳩界にとって夢と浪漫の象徴である。中でも「稚内」を放鳩地とする東日本GNは、国内最大羽数を誇るドリームレースだ。公称1200Kとなる静岡連盟が再度、この最長距離レースに参戦したのは2007年のことである。野澤義徳氏が鳩レースを再開したのもちょうどこの頃だ。同氏は子供の頃、東京オリンピックの1万羽放鳩をきっかけに鳩飼育を始め、思春期をピジョンスポーツに捧げるほどの鳩少年だった。超長距離に憧れ、1200Kにも挑戦したことがあったものの帰還までは果たせず、記録は700K止まりだったという。

少年時代の夢を果たすべく再開したというわけだが、ゆえに素材は地元鳩界の長距離系をセレクト。野澤氏は当時、タイムリーであった2007年東日本GN連盟優勝鳩舎・佐藤廣志氏(静岡県連合会)の下に訪れ、中野鑑二氏が「対1200K用」に練り上げたという飛び筋――「中野長距離系」に注目し、数多く導入した。中野長距離系とは“ズワルテン(バルセロナIN優勝‘バルセロナ’の直子)”と“エレクトリック(リモージュN8位・カオールN2位)”を軸にブラークハイスやシオン、カイパー兄弟といった超長距離の名門系統を重ね構築された飛び筋。とりわけ1996年の東日本CH連盟優勝鳩“中野400号”とその直仔である中部ブロックGN1200K連盟優勝鳩“ラ・910”は「銘種鳩」として有名で、2007年然り、それ以降、1200K翔破を果たしたトリにはこれらの血がほとんど流れている。

ともあれ野澤氏はこの中野長距離系をベースに鳩作りを行い、2010年から夢の1200Kのチャレンジをスタート。7羽参戦するも悔しくも全滅となり、その時唯一帰還を果たしたのは佐藤氏であり、中野長距離系のトリであった。使っている系統は間違いない。足りないとしたら自分の腕である。野澤氏は多忙な身でありながらできる限り鳩飼育に時間を割き、テクニックを磨いた。彼の努力が一つの形となったのが2013年である。7羽送り出し唯一羽、14日目帰りとはいえ、稚内からの1200Kレースで見事帰還を達成する。ここで何かを掴んだのか、翌年の2014年には10羽参加し記録範囲内での打刻に成功。しかも連盟2位、1200K地帯でも堂々2位に輝いた。そのトリはむろん中野長距離系による成果であり、なんとその叔父が同レースの1200K地帯で優勝! トップは他鳩舎ではあったものの、同族でワンツーという衝撃的な結果を残し、中野長距離系の偉力を大きく示した。2015年の野澤氏は東日本GNに再び10羽投入し、1羽目が2日目、そして2羽目が9日目に帰還。いずれも中野長距離系とは別系統であったが、2日目の記録鳩に関しては連盟で3位、1200K地帯6位、総合では246位という成績を収め、前年の307位から60位以上のランクアップを成し遂げた。

これまでの軌跡から意識は東日本GNを「帰す」ではなく、「連盟優勝」に。ベストコンディションと自負していた2016年はまたまた10羽参加するも前年の桜花賞で8日目に八丈島に迷い込み宅急便で送られてきたトリが、50日目で自力帰還。今春、リベンジをかけ前年に近い状態で10羽稚内に送り込むと、うち1羽が記録範囲内で帰還を果たす。3日目に姿を現したそれは野澤氏の目標を大きく越え、なんと全参加鳩の頂点――総合優勝! 野澤氏は静岡鳩界にとって史上2羽目、実に40年振りの東日本制覇という大快挙を成し遂げた。

静岡県産の1200K系統で築かれた伝説!

野澤氏が帰還を確認したのは、放鳩3日目の午前中のことだった。その時、仕事中であった同氏は妻からの帰還報告を受けて、急いで鳩舎に向かったという。

「雨が止んで、強い風が吹いていました。ホント雨が止んだタイミングを測って帰って来たんでしょうね。最初は同日放鳩の桜花賞の参加鳩だと思い、自動入舎機を見ると、東日本GNに参加したトリ! これは夢ではないか、と何度も記録器を確認しました」。

東日本GN総合優勝鳩“レジェンド稚内号”。秋の300Kで猛禽類から受けた傷は治療を終えているとはいえ、GN参加時はもちろん、今も痛々しく残っている。

東日本GN総合優勝鳩“レジェンド稚内号”。秋の300Kで猛禽類から受けた傷は治療を終えているとはいえ、GN参加時はもちろん、今も痛々しく残っている。

選手鳩鳩舎を覗いてみると、巣立ちを終えた若鳩に交じって斬撃のような傷をもったトリが、羽毛が乾いた状態でキョロキョロしているのを確認できた。間違いない。GNに出したトリだ。この勇者は、2016年秋の300Kで体を4針縫うほどに大怪我をして帰ってきた1羽で、同氏が治療したもののその縫った後もその傷跡は消えず…。強烈なインパクトをもつ風貌をしていた。

「またこのトリはGNに参加させるか、最後の最後まで悩んだ1羽でもあったので、よく覚えているんです」。

野澤氏はこの全兄弟とどちらかを出すかで悩んだとのこと。結果、小さくて長手のボディに弾力性の長けた筋肉、そして軽さが決め手となり、この“傷だらけのレーサー”を選んだという。鳩体的にはまさしくクラシックステイヤーであることはいわずもがな。傷がやはり少し気になったものの、勝負できると期待していた1羽だった。

固体に加えて血統にも自信があった。父親は静岡県産超長距離系の塊。系統の実績は1200Kに集約され、中野長距離系と相性が良いとされている岩田義教鳩舎の飛び筋も絡んでいる。一方の母鳩は本筋の中野長距離系であり、1200K帰還鳩を量産した“中野400”と“ラ910”の直系に2007年東日本GN1200K連盟優勝鳩をクロスしたメス鳩で、母方祖父はタテのラインで2007年の同レースで連盟2位を収め、しかもその直仔が2010年の同レース連盟優勝。母方祖母からも2016年の東日本GN1200K連盟優勝鳩が生み出されているという、まさに一級品だ。鳩レースとは血統がものをいうブラッドスポーツである。“傷だらけの勇者”は、まさしく1200Kのサラブレット的な1羽であり、また野澤氏がとったデータから1歳鳩でGPをジャンプして1200Kを記録できたのは、中野長距離系だけとのこと。ちなみに今回のGN総合優勝鳩も地区Nからの参戦だった。加えてこの中野長距離系は日本海からが必勝コースだと言われ、今回の東日本GNの参加鳩は、秋田、山形、新潟県下で目撃されている。事実、日本海側ではポイント、ポイントで雨は止んでおり、おそらくこのトリは最短ルートを飛んできたのでは、というのが野澤氏の考えだ。レースとして鳩の能力が問われる「超耐久戦」という展開が追い風となったのは間違いないが、この勝利を必然と言わずになんといえるのだろうか。

究極の夢を参加鳩舎最遠距離、しかも実距離1193Kというありえない環境で叶えた野澤氏。この勝利と優勝鳩“レジェンド稚内号”は静岡のみならず、日本鳩界の伝説として後世に残るであろう。

2017年東日本GN2,828羽中総合優勝 

“レジェンド稚内号”
16PA01039 B ♀ 野澤義徳鳩舎作翔
2017年東日本GN2,828羽中総合優勝(実距離1193.374K/分速614.154m・3日目記録)、1200K地帯優勝

16PA01019

Father Grandfather
05PA02215 BC 村松敏夫鳩舎作翔
2005年静岡300K2,182羽中総合20位
2006年静岡桜花賞900K総合4位
直仔/静岡Rg400K2,609羽中総合14位
孫/東日本CH1100K連盟3位
04PA05632 B 村松敏夫鳩舎作
父/南稚内GN総合優勝の直仔×遠別CH号の娘
直仔/2006年静岡桜花賞総合8位
Grandmother
01PB08210 BC 遠藤 宝鳩舎作
一柳鳩舎作翔(1200K連盟2位)×岩田義教鳩舎作(姉妹/1200K2羽)
Mother Grandfather
10DA35664 B 佐藤廣志鳩舎作 05PA03809 B 佐藤廣志鳩舎作
“中野400号”(1996年東日本CH1100K連盟優勝)דラ・910”の孫
直仔/“楊飛治”(2007年東日本稚内GN1200K連盟2位)
孫/“ロマネスク”(2010年東日本稚内GN1200K翌日帰り連盟優勝)
異母兄弟/“ラ・910”(1999年稚内GN1200K連盟優勝)
Grandmother
咲耶木の花
05PA03877 BC 佐藤廣志鳩舎作翔
2007年東日本稚内GN1200K2,254羽中総合88位・連盟優勝
孫/“中野雨乙女号”(2016年東日本稚内GN1200K地帯3位・連盟優勝)
曾孫/日鳩300K&500K総合優勝

2014年東日本GN1200K地帯2位

“レジェンド中野39号”
13PA06739 BC ♀ 野澤義徳鳩舎作翔
2014年東日本GN1200K地帯2位(実距離1193.374K/分速296.361m・5日目記録)、総合307位

13PA06739

Father Grandfather
06PA01848 BC 佐藤廣志鳩舎作翔
08年春まで使翔 500K3回他
直仔/東日本CH1100K連盟4位
98BB10071 BC 福田守鳩舎作
00年1200K5位
オペル系(1100K2回)×アイザクソン系(1100K2回)
Grandmother
05PA03865 B 佐藤廣志鳩舎作
中野400(東日本CH1100K連盟優勝)の直仔
異母兄弟/ラ910(GN1200K連盟優勝)
直仔/14年東日本GN1200K地帯優勝
Mother Grandfather
三峰蟹田GP号
06PB04614 BC 奥田義信鳩舎作翔
07年中部三地区GP総合優勝
03PH02964 BC 小林信雄鳩舎作
菊花賞総合優勝×GP総合優勝
Grandmother
03PB03148 S 奥田義信鳩舎作
スミス系 稚内GN2回記録の娘