驚異的な進撃を見せたルーキーの軌跡 阿部則夫
■阿部則夫鳩舎(福島北部連合会) 〒960-1101 福島県福島市大森字西ノ内85ー2 携帯 090-2795―6851
レース歴3年の阿部則夫氏(福島北部)は、全レース制覇を目標にキャリアをスタート。2014年、2015年と着実に結果を残し、2016年には連盟レース6レース連続ベストテン入りという、連合会史上初の快挙を達成! 大輪の花を咲かせた。衝撃的な進撃を見せたこのルーキー、その軌跡を見る!
入念な準備を経て体現された3年目のブレイク
今年で鳩飼育を始めて3年目の阿部則夫氏には、1つの明確な目標がある。それは、レースマンなら誰しもが夢見る――「全レース制覇」という果てなきものだ。むろんそれを実現するには入念な準備が必要であることはいわずもがな。選手、種鳩併せて38坪に及ぶ巨大ロフトを建設し、内装では日当たりや室内の風通しを意識したことはもちろん、エアコンまで設置するほど環境作りに大きなこだわりをみせ、戦力選びもまた、地元、国内、ヨーロッパの各飛び筋だけでなく、鳩友の須田明雄氏を介して知り合ったという日本優秀鳩舎賞2回の超強豪・吉村和道氏と関東CH(現・ジャパンカップ)総合優勝、衆議院議長賞最高分速を果たした超銘鳩“CH017(セブンティーン)”の作翔者・佐藤恒雄氏の2人からCHバードという「幹」を直接導入するなど、力の入れ込みようはかなりのものだ。管理面では、少年時代にレース経験はあるものの、その頃と比べて現在の作出、調教テクニックは比較にならないほどに進歩している。ゆえに同じ連合会の仲間という縁から、管理、血統に対し知識豊富な渡辺義弘氏に合理的な手法を学んだようだ。
結果、1年目――2014年秋のRgで総合10位入賞という新人らしからぬ活躍を見せると、翌春にはきさらぎ賞400Kで連合会初制覇を達成! 秋も秋で2年連続Rg総合10位、なおかつ併催の菊花賞を制した他、シルバーエクセレントピジョン級のCHバードを作り出すなど連合会、そして連盟において着実に頭角を現していった。その勢いは品評会でも見られ、サカマキ杯300K上位入賞鳩“ノリピー”が2年連続東北南部ブロック連盟品評会の中距離♀の部一席、総合では二席に輝き、全国でも部門別で二席を手にしている。
2016年春は阿部氏にとって飛躍のシーズンとなった。連盟レース緒戦のサカマキ杯300Kで総合3位に入賞すると、続くきさらぎ賞400Kでも堂々ベストテン入り。そしてメインのRgは自鳩舎の主力――吉村氏の吉峰系のパワーで総合シングル入賞を達成すると、地区Nではもう一つの主力系統が爆発! 超銘鳩“CH017”の近親交配で作り出された1羽が連合会優勝、そして総合6位への入賞を果たす。しかもその1羽は、宗家である佐藤氏自身の作出鳩との由。果たして主力と決めていたこの2つの飛び筋が中距離のメインレースで活躍したことは、阿部氏にとって大きな励みになったようだ。
トラウマ的一戦を制し、連合会史にその名を刻む
2016年は地区Ñでレースをストップし、広域レースは2017年春で勝負と阿部氏は考えていた。しかしその計画はこれまでの快進撃から、GP以降も続行。とはいえ全鳩ではない。筋肉の柔らかい、つまり回復力の長けた長距離バードだけを参戦させたとのことだ。結果、GPは連盟7位に入り、ベストテン入りの連続記録を「4」から「5」に伸ばすことに成功。ちなみにこの数値は福島北部連合会にとって史上初の快挙とのことである。続いてのCHは、初挑戦の昨年、帰還ゼロの憂き目にあった阿部氏にとってトラウマ的一戦。ゆえに渡辺義弘氏に管理指導を改めてお願いし、対策を練り上げたようだ。
GP後4日目から舎外を再開し、飼育環境はナチュラル。猛禽類に追われるため、毎日1時間から1時間半ほど飛んだようだ。訓練派持ち寄り3日前に20Kを1回。餌はタンパク質の多い豆類主体の配合飼料を採用した他、持ち寄り4日前からアミノ酸系ビタミンを、そして3日前から完全栄養食品と呼ばれる「ナトリパワー」(←サカマキオンラインショップにリンク)を、持ち寄り日まで与えたようである。運動量、餌のバランスが良かったのか、CHに参加した6羽は全て理想的な形――「やもめ」。コンディションとともに間違いなく昨年以上の仕上りだった。ベストコンディションで持ち寄れたCH。阿部氏の進撃はここでクライマックスを迎える。翌日に帰還した1羽が総合で5位、連盟序列、つまり併催の桜花賞ではなんと総合優勝に輝いたのだ!
地元の飛び筋×ヨーロッパの銘血スーパーCH=桜花賞制覇!
阿部氏に初の総合優勝をもたらしたヒロインは2014年生まれの成鳩である。作出者は阿部氏ではなく、かつて西鹿児島GNを制した地元のヒーロー・中塚兄弟鳩舎だった。この1羽は彼らの代表鳩にしてそのGNウィナーである“マービラス鹿児島号”の一族であり、父方祖父がその半兄弟にあたる。加えて父方祖母の西鹿児島GN総合シングル鳩“飯坂Ⅱ号”は、福島北部のレジェンド・赤井貞夫氏の西鹿児島GN総合優勝鳩の孫。果たして父鳩は連合会史に残る「二大銘鳩」の筋で作られた「ザ・福島北部」のトリというわけだ。
一方の母鳩は地元産ではなく世界的銘鳩、銘血を所有する内山勝博氏の作出鳩。祖父母は4羽とも輸入系である。しかもうち3羽が、コール・デハイデの超銘種鳩“ド・クランパー”(←銘鳩辞典にリンク)の近親にして、モンデマルサン、ベルジュラックのNPO主催の2レースを制した“スーパーマーティー”にヤン・テーレンの基礎鳩“ファミューズ508”の血で構成されたルフェックN3位鳩“ド・ルフェック”、そしてフェルテルマン父子の伝説的銘鳩“ローイ50”(←銘鳩辞典にリンク)近親の娘であり、2008年のサンバンサンNでセクターⅣを制覇、ナショナルでは第2分速をマークした“クライネエッシー”と、スーパーCHはスーパーCHでも血統も兼ね備えた極上の逸品だ。ちなみにその母鳩は、2012年に仙台で行われた全国品評会内で行われたオークションで、中塚兄弟が導入したようである。
地元の最強飛び筋に一流の輸入系というこの組み合わせは、双方の血統での実績から完全に長距離狙いの配合だったとの由。しかしその全兄弟たちは中塚兄弟、そして阿部氏ともども、レースに参加する以前に猛禽類にやられており、その能力は未知数であった。とはいえ、そのバックボーンを紐解けば、桜花賞制覇という結果は、然るべきといえば然るべきなのかもしれない。
果たしてこの銘血バードによる勝利により、最高の形で2016年春を締めくくった。しかも愛鳩の友主催の準地区CH賞にも選出され、その名声は全国に広がる。それは全て下準備をした上での成果であり、必然だったというわけだ。“進撃のルーキー”阿部氏が、近いうちに東北南部ブロックを席巻し、なおかつ日本鳩界の最高賞の1つである“日本優秀鳩舎賞”に輝くことを期待したい。それだけのポテンシャルが阿部氏にはある!
2016年春福島中桜花賞900K34羽中総合優勝
“マービラスマーティー号”
14OX03214 B ♀ 中塚兄弟鳩舎作 阿部則夫鳩舎使翔
2016年
福島中桜花賞34羽中総合優勝(実距離859.978K/優勝分速711.088m)
東北南部CH411羽中総合5位
全国レース鳩品評会長距離クラス♀の部四席
Father | Grandfather |
10OX10826 BC 中塚兄弟鳩舎作翔 400Kまで飛翔 |
04OX12069 BCP 中塚兄弟鳩舎作 異母兄弟/99年東北南部ブロック連盟 西鹿児島GN総合優勝“マービラス鹿児島” |
Grandmother | |
“飯坂Ⅱ号” 96OH15265 BCP 中塚兄弟鳩舎作翔 98年東北南部ブロック西鹿児島GN総合5位 |
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Mother | Grandfather |
12PE04570 BC 内山勝博鳩舎作 | 09PE00002 BC 内山勝博鳩舎作 モンデマルサン、ベルジュラック各NPO優勝の“スーパーマーティー”× ペルピニャンIN2位の異母兄弟“パメーラ” |
Grandmother | |
09PE00185 S 内山勝博鳩舎作 ルフェックN3位の“ド・ルフェック”× サンバンサンN優勝の“クライネンエッシー” |
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阿部則夫鳩舎の代表チャンピオン