天才鳩を生み出すことで始まった鹿島フライツァ―系の物語 鹿島ファミリーロフト・鹿島章弘鳩舎

天才鳩を生み出すことで始まった鹿島フライツァ―系の物語 鹿島ファミリーロフト・鹿島章弘鳩舎
■鹿島ファミリーロフト(鹿島章弘・茨城東連合会)
〒311-3501 茨城県行方市芹沢662-20 Tel:090-2166-9624 Fax:0299-55-3364
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 スタンダードな管理の下、同一に調教が行われる委託鳩舎は、レース鳩としての才だけで競われるフィールドである。近年はレース自体に重きを置くようになったが、古くから性能検定、つまり天才鳩の発掘場として使われてきた。中でも伊賀国際鳩舎は猛禽類に囲まれた飼育環境に山越え必須という世界でもトップクラスの厳しさを誇る委託シリーズだろう。2013年、その超難関シリーズのファイナルレース・国際CHにて、鹿島章弘氏(茨城東連合会)の委託鳩が、見事全国優勝に輝く。彼はこの大勝を機に父方祖母の歴史的超銘鳩「フライツァ―」の名を拝借して〝鹿島フライツァ―系〟を旗揚げ。そして2015年、鹿島氏の形成したこの飛び筋が、再び伊賀国際鳩舎を舞台に、シングル入賞2回という天才鳩を誕生させる。しかもその配合パターンは2013年国際CH全国優勝鳩“鳩物語in伊賀77号”と全く同じ――父・聡氏の築いた系統“鹿島ボスチン系”との成果であった。

価値観を180度変えた一文字ロフトとの出会い

一文字ロフト・松平竜也氏(右)との出会うことで、ピジョンスポーツに対する姿勢が180度変わった鹿島章弘氏。

一文字ロフト・松平竜也氏(右)との出会うことで、ピジョンスポーツに対する姿勢が180度変わった鹿島章弘氏。

一つの出会いが世界を大きく変える。40代の若きレースマン・鹿島章弘氏にとって、松平竜也氏(一文字ロフト代表)との出会いがまさにそれだ。

それまではベテランのレースマンである父・聡さんの教えもあり、鳩は血統でなく「固体」で見るようにしていたという。ゆえに系統に関して全く興味がなく、父が“87MA02391(1989年東京東連盟地区N総合優勝)”を基礎に形成した“鹿島ボスチン系”を軸に使っていたとはいえ、とにかく「鳩質勝負」だった。精密溶接の職人として多忙の日々を送る鹿島氏は管理に集中できないため成績は安定しないものの、2009年に東日本稚内GNの連盟3位に入賞するなど、時折大きな結果を残している。そういう意味ではこのスタイルは正解だったのかもしれない。

しかし一文字ロフトの登場は、鹿島氏の考えを180度変えるほどまでに衝撃的だった。同ロフトは、バルセロナIN優勝、ナショナルエースピジョン賞といった“世界”のスーパーチャンピオンの血を武器にあれよ、あれよ、と茨城連盟の主役に躍り出る。あまりの強さにレース鳩は固体だけでなく「血統も重要」だということをまじまじと見せつけられた。

しかも鹿島氏とロフトマネージャーの松平氏は年齢が近く、お互いに意識してしまうのは自然なこと。ただし、彼にとってそれはライバルとしてではなく純粋な「憧れ」だった。

「松平さんと知り合ってもう7、8年経つかな。家族ぐるみで仲良くさせて頂く関係ですが、あの方はレースマンとして、そして企業家としても一流ですからね。今でも会えば恐縮しっぱなしですよ(笑)」。

一方、父の聡氏にとっても一文字ロフトの存在は大きかったようである。所有する桁違いなチャンピオン群に心を惹かれたのであろう。茨城連盟や茨城東連合会の表彰式に一文字ロフト作のトリがオークションに登場すると次々と落札。しかも今まで鳩分譲の広告を見ることはほとんどなかったのに、一文字ロフトの頁に関しては食い入るように見ていたそうだ。中でも同ロフトの看板鳩“フライツァ―”はお気に入りだったようで、「この鳩の直仔がほしいなあ」とよくつぶやいていたとのことである。

世界的超銘鳩の直仔を基礎に鹿島フライツァ―系を旗揚げ!

フライツァ― DV01769-03-0031

★フライツァ―
DV01769-03-0031 BC アンドレアス=トラパ作翔
2007年オリンピアード中距離部門1位
2006年ドルトムントナショナルエースピジョン賞1位
*543K7,150羽中優勝、550K3,019羽中優勝、409K5,503羽中優勝、5,431羽中優勝、350K6,907羽中優勝、5,370羽中優勝、161K1,193羽中優勝他

“フライツァ―”は、ドイツの飛ばし屋・アンドレアス・ドラパが作翔し、中距離レースであまたの勝星を挙げて2006年にヨーロッパカップ・中距離部門のトップに選出。翌2007年のオーステンドオリンピアードでは同部門で歴代最小入賞率を叩き出し、見事世界1位を獲得した歴史的超銘鳩だ。

ゆえにこのトリを手に入れるための対価がいかなるものかは、想像するに容易いだろう。鹿島氏も“フライツァ―”がバルセロナIN優勝鳩より高かったという噂は耳にしていた。加えてこれほどの銘鳩なだけに飛ばし屋に限らず、銘血収集家たちも食指を動かさないわけはない。金額はもちろんのこと、人気の面でも導入するのは困難と考えていた。それでも父のささやかな願いを叶えるべく、鹿島氏は思い切って松平氏に相談すると、それならば――と快諾。完売していたところを特別に一文字ロフトが種鳩として作出した2010年生まれの直仔を譲ってもらえることに。そのため、“フライツァ―”にかかったメスは、これもまた世界的超銘鳩“スーパーベン(バルセロナ・フランスN優勝、2位、3位)”の娘だった。超銘鳩の粋を集めたこのトリをバースデープレゼントとして、父に贈ると聡氏はとても喜んでくれたという。そしてこの1羽が後に鹿島氏自身の運命を大きく変えることとなる。

2012年にこの“フライツァ―”の直仔「10HA08744」に父の系統「鹿島ボスチン系」でも血の濃いメス“マリン号”をクロス。うち1羽が、「伊賀国際鳩舎」のファイナルレースでなんと優勝したのだ。スタンダードな管理の下、同一に調教が行われる委託鳩舎は、レース鳩としての才能だけで競われるフィールドだ。しかも伊賀国際救急車は、猛禽類に囲まれた環境、山越え必須のレースコースと世界でもトップクラスの難関シリーズである。ファイナルを飛びきるだけでも並大抵な才能がなければ不可能なのに、その頂点にまで射止めた“鳩物語 in 伊賀77号”――。このトリは『天才鳩』以外なにものでもない。

「このトリはそれまでの成績が良かったし、“フライツァ―”の孫ということで、国際CHへの参加を見合わせるつもりだったんです。しかし一文字ロフトの松平(竜也)さんから最終レースに参加した方がいいという声に後押しされて、思い切って続投しました。その結果が全国優勝ですからね。しかも“フライツァ―”の孫…。松平さんには感謝です」。

しかも鹿島氏はこの一戦で勝利の喜び以外で大きなものを味わったようだ。それは鳩レースの魅力の1つである「スリル感」である。

「レースが終わるまで、このトリが帰ってくるのか、来ないか、ずっとドキドキしっぱなしでした。この感覚は本当クセになります(笑)」。

鹿島氏が抱いた新鮮なこの感覚は、まさに勝負師としての本能そのもの。かくにもこの一戦を機に、「胸が躍る瞬間」を求めてピジョンスポーツに打ち込むこととなる。加えて自身にプレッシャーをかける意味で、「鳩物語 in 伊賀77号」の父に「“フライツァ―”の直仔」である「10HA08744」に“サム号”と名付け、このオス鳩を基礎に「鹿島フライツァ―系」を旗揚げした!

2羽目の天才鳩を生み出すなど、系統として日々進化中

情熱が形に現れるホビーとあって、すぐに結果は訪れた。翌年の2014年に「東日本稚内GN総合優勝」、「ジャパンカップ総合優勝」より難しいと地元では言われている茨城桜花賞で総合優勝を果たし、鹿島鳩舎として約四半世紀ぶりとなるビッグな勝利を手に入れる。殊勲の優勝鳩は「鹿島フライツァ―系」ではなかったものの、一文字ロフトから導入した「スーパーダックス」の筋に自鳩舎の飛び筋「鹿島ボスチン系」をクロスしたもの。ちなみにこの「ニュー一文字系×鹿島ボスチン系」というパターンで作出したトリが、他鳩舎においてだが、同年のジャパンカップにて連盟2位の好成績を収めている。

2015年も自鳩舎において安定した好成績を残す一方、伊賀国際委託鳩舎では、連合会対抗レース300キロで全国8位、最終戦・オリエンタルカップ全国4位という、1シーズンに2つのシングルという天才鳩が誕生。しかもそれは「鹿島フライツァ―系」基礎鳩「サム号」の孫で、その相方である母鳩もまた「マリン号」の全姉妹と、「鳩物語 in 伊賀77号」とまるっきり同系である。またしても系統の親子コラボによる成果だ。2012年以降、わずか2鳩舎しかファイナルまで翔破できなかったという伊賀国際鳩舎にて、この実績は系統として非常に大きい。

一方、自鳩舎でも2羽目の天才鳩こと「鳩物語 in 伊賀71号」の全兄弟が、2015年春の茨城桜花賞で総合39位。他鳩舎では「鳩物語in伊賀77号」の同腹の孫鳩が、鳩協、日鳩の両協会が誇る作出の達人たちが集うインターナショナルロフトの会主催の委託レースにて、秋季エースピジョン1位を獲得するなど、「鹿島フライツァ―系」は、着実な成果を出してきている。鹿島氏自身も、一連の活躍をみて、血統の偉力を痛感したのはいわずもがな。とりわけ、伊賀国際鳩舎をはじめとする活躍劇から、もう1つの本流「鹿島ボスチン系」とはかなり相性が良いという印象だ。加えて、近親交配でも昨秋の150キロや今春の地区Nでの優勝鳩が生まれており、好結果が出始めていることも注目である。

ところで今春から鹿島氏は東日本稚内GNに本格的に挑戦するという。目標はもちろん、基礎鳩「サム号」と出会わせ、また自身の信念まで変えてくれた一文字ロフトだ。

鹿島氏は父・聡氏(後列左から3人目)だけでなく、家族全体でピジョンスポーツを楽しんでいる。ゆえに登録名も「鹿島章弘鳩舎」ではなく、「鹿島ファミリーロフト」だ。

鹿島氏は父・聡氏(後列左から3人目)だけでなく、家族全体でピジョンスポーツを楽しんでいる。ゆえに登録名も「鹿島章弘鳩舎」ではなく、「鹿島ファミリーロフト」だ。

「生意気かもしれませんが、(笑)、総合優勝2回にシングル多数の絶対王者・一文字ロフト相手にどこまで戦えるのかも楽しみですし、それ以上に万が一勝てたとしたら…。そう考えただけでワクワクが止まりません」。

あくまで勝負の世界特有の「スリル」を求めての参戦だが、東日本稚内GNは血統がものをいう領域。大本が歴史的超銘鳩であり、また系統としての実績から「鹿島フライツァ―系」から3羽目、4羽目の天才鳩が誕生――ジャイアントキリングは決して不可能な夢ではない。

高齢化の一途を辿る日本鳩界だが、このように鳩レースに夢中な若者がいることもまた事実だ。しかも鳩レースの本場・ヨーロッパのようにファミリーで、この趣味を楽しんでいる。ゆえに登録名は「鹿島章弘鳩舎」ではなく「鹿島ファミリーロフト」だ。その彼が紡ぐ鹿島フライツァ―系の物語――。系統、そしてレースマンとしてのさらなる熟成を期待したい。

2013年春伊賀国際鳩舎国際チャンピオンレース700K33羽中全国優勝

‘鳩物語 in 伊賀77号’
12HA01677 BCW ♀ 鹿島章弘鳩舎作・委託
2013年春伊賀国際鳩舎
国際チャンピオンレース700K33羽中全国優勝
オリエンタルカップ  700K 39羽中全国14位
国際親善鳩レース大会 500K126羽中全国11位
国際ダービーレース 400K694羽中全国64位
全兄弟の直仔/‘エヴァ71号’(15年秋180K1,180羽中優勝)

伊賀77

Father Grandfather
フライツァー
DV01769-03-31 BC アンドレアス・ドラパ作翔 一文字ロフト種鳩
2007年オリンピアード中距離部門世界1位(史上最少入賞率)
2006年ドルトムントナショナルカップエースピジョン賞1位
孫/13年茨城地区N総合優勝
  14年春茨城Rg総合優勝
  15年秋茨城Rg総合優勝
Grandmother
サム号
10HA08744 BC 一文字ロフト作
鹿島フライツァー系基礎鳩
孫/鳩物語in伊賀77号、2016年春茨城地区N優勝
異母兄弟の直仔/2013年春茨城地区N総合優勝、
        2014年春、2015年秋茨城Rg総合優勝
05LB18548 DCWP 木島 寛鳩舎作
スーパーベン(バルセロナN優勝、2位、3位)×
ベルジュラックNPO32,592羽中優勝の娘
Mother Grandfather
02MA03247 BC 鹿島 聡鳩舎作
鹿島ボスチン系基礎鳩87MA02391(1989年東京東地区N総合優勝)の孫
Grandmother
マリン号
11HA04411 BC 鹿島章弘鳩舎作
鹿島ボスチン系新基礎鳩
半兄弟/2016年春茨城西コース250K優勝
全兄弟の直仔/東日本CH優勝(6,589羽中総合29位)
       鳩物語in伊賀71号
03MA12994 B 鹿島 聡鳩舎作 鹿島ボスチン系
東日本CH総合8位×600K2,420羽中総合優勝

2015年春伊賀国際鳩舎オリエンタルカップ700K 58羽中全国4位

‘鳩物語 in 伊賀71号’
14HA09171 BC ♂ 鹿島章弘鳩舎作・茨城東連合会委託
2015年春伊賀国際鳩舎
オリエンタルカップ 700K 58羽中全国4位
国際親善鳩レース大会500K 76羽中全国46位
国際ダービーレース 400K258羽中全国18位
連合会対抗レース  300K500羽中全国8位

伊賀71

Father Grandfather
サム号
10HA08744 BC 一文字ロフト作
鹿島フライツァー系基礎鳩
フライツァー×スーパーベンの娘
直仔/鳩物語in伊賀77号(2013年伊賀国際鳩舎国際CH全国優勝)
異母兄弟の直仔/2013年春茨城地区N総合優勝、
        2014年春、2015年秋茨城Rg総合優勝
Grandmother
ケン
12HA01667 BC 鹿島章弘鳩舎作
08DA43873 BW 一文字ロフト作
スーパーダックスの娘
孫/汐見2号(2014年茨城桜花賞900K総合優勝)
Mother Grandfather
02MA03247 BC 鹿島 聡鳩舎作
鹿島ボスチン系基礎鳩87MA02391(1989年東京東地区N総合優勝)の孫
Grandmother
ユリア号
11HA04242 BC 鹿島章弘鳩舎作
鹿島ボスチン系
全姉妹/マリン号(2013年伊賀国際鳩舎国際CH全国優勝の鳩物語in伊賀77号の母)
半兄弟/2016年春茨城西コース250K優勝
03MA12994 B 鹿島 聡鳩舎作 鹿島ボスチン系
東日本CH総合8位×600K2,420羽中総合優勝