ユートピアに咲いた大輪の花 高山初夫鳩舎

ユートピアに咲いた大輪の花 高山初夫鳩舎
■高山初夫鳩舎(中京連合会)
 〒486-0842 愛知県春日井市六軒屋町3-191 TEL090-3150-0965

Close-up 高山初夫

 2006年にクラウン賞、そして1羽の鳩で日本エースピジョン賞全国1位と総理大臣賞に替わる協会賞全国優勝という離れ業を演出した強豪・高山初夫氏(中京連合会)。同氏が長年の夢だった晴耕雨読の日々を手にするため、鳩舎を移転したのが07年のことだった。しかしそこはレース鳩にとってユートピアではなく、「猛禽類の巣」という絶望的な環境…。それは、キャリア絶頂期でありながら、見せ場らしい見せ場を全く作れないほど凄惨なものであった。想像を絶する猛禽類との闘いの果てに、今年‘日本一のレース鳩’が誕生。その名は「咲咲(ショウショウ)」。Rg、地区Nで5%内、CHで1%内入賞及び総合2位に入賞を果たした自鳩舎のエースが、日本エースピジョン賞全国1位という、大輪の花を咲かせた。

この場所にきた証を…

2006年に1羽のレース鳩で日本エースピジョン賞全国1位、総理大臣賞全国優勝のダブル受賞という離れ業を演出し、なおかつピジョンジャーナルクラブ主催の三賞では日本一の称号である‘クラウン賞’を獲得した高山初夫氏(中京)。その翌年もRg、地区Nで好成績を収め、CHも落雷で自動入舎機の故障さえなければ、‘2年連続日本一’も夢ではなかった。キャリアの絶頂期ともいえるそのタイミングで、同氏は愛知県春日井市から岐阜県土岐市に鳩舎を移転。それは予てからの夢――人里離れた場所でレース鳩の飼育を励み、晴耕雨読の日々を送るためであった。

「もともとは60歳でと考えていましたが、鳩舎の老朽化が想像以上に早かったので、59歳の時――1年前倒しで07年秋に移転しました」。

高山鳩舎

多治見駅より車で30分ほど走った山中に建てられた22坪の高山鳩舎。ここは猛禽類の巣窟であり、レース鳩は毎日鷹やハヤブサに襲われている。

選手鳩10坪、種鳩12坪の平屋で建てられた新鳩舎は、多治見駅から車で30分ほど走った山中にある。近くに民家はもちろんのこと電線もなく、飛ばすにあたっての障害は何もない。一見すると、調教に集中するには非常に適したロケーションだ。ゆえに成績はこれまで以上になることは想像するに容易く、高山氏自身もその期待感を胸にこの場所を選んでいた。

ところが、である。このユートピアは、猛禽類に支配された場所であった。オオタカ、ハヤブサによる襲撃は毎日のように行われ、1日3、4羽で収まればラッキー。1回の舎外で20羽以上やられることもざらだ。もちろんこの状況にただ指をくわえているわけはなく、選手鳩の作出数を大幅に増やしたり、調教内容も舎外から訓練主体の訓練に切り替えるなど、考えうる全ての手段をもって抵抗した。それでも状況が明るくなる兆しは全くなし。むしろ春の長距離レースに参加できない屈辱的なシーズンもあったようである。日本鳩界を射止めた「血統」、「管理」、そして「知恵」さえも、この過酷すぎる環境の前ではただただ無力でしかなかった。ゆえにこの場で収めた翔歴で目を見張るようなものは、2008年秋の東海Rg総合優勝、そして2009年春の東海CH総合2位くらい…。クラウン賞をも射止めたあの輝きはまったくもって影をひそめてしまった。

「ここの近くでレースをやっていた安藤(正彦)さんから猛禽類が出るよと、忠告を頂いていましたが、まさかここまでひどいとは思わなかった。クラウン賞や鳩協の日本優秀鳩舎賞を狙いたいのは、やまやまですけど…。(参加)羽数が必要なタイトルなので、最終レースまで参加できるかどうかわからないこの状況ではほぼ不可能でしょうね」。

思い描いていたのとは、正反対のピジョンライフ。しかもチャレンジしては失敗というまさに負のループだ。ゆえにこの場所に移転したことを後悔していないと言えば嘘になるであろう。

「だからこそ、何の実績を残さないままここを去りたくはないですね。今の場所で狙えるとしたら、1羽の鳩で獲得が可能な総合優勝か、エースピジョンのタイトルしかありません。ならば全国の頂点を目指したい。だからここ3年、4年は日本エースピジョン賞、その全国1位だけを目標に戦っています」。

超銘鳩を作ってこの場所にきた証を残したい――。

絶望的なこの環境に対し一矢報いることこそが、近年における高山氏の原動力となっていたという。そして今年、運命の時が訪れた。高山氏の作翔した「14SA07169」が、なんと日本エースピジョン賞の全国1位に輝いたのである。

長距離の名門血統で固められた然るべき万能型オールラウンダー

「前年の全国1位と比べると入賞率的に(全国1位)は難しいと思っていました」。

そう語る高山氏だったが、ふたを開けてみれば、2位以下を入賞率で0.7以上突き放しての全国1位。堂々たる成績での受賞である。彼の宿願を叶えたヒロインは、Rg、地区N、桜花賞の3レースを実質、自鳩舎のトップで帰還(*地区Nは自鳩舎2番手だが、トップと同時刻に帰還)。前者2レースは1%台、後者は1%内入賞を収め、なおかつ総合2位に輝いている。この「14SA07169」は、総合にしろ連合会にしろ優勝に縁がなく、完全なエースピジョンタイプだ。ちなみにどちらも2位だが「会長賞」、「ベルギー王立愛鳩家協会会長賞」までも獲得しており、エースピジョン賞三冠を果たしている。

絢絢

高山氏は2006年にも
日本エースピジョン賞全国1位を獲得!

絢絢(Ken Ken)

05SA11510 BC ♀ 高山初夫鳩舎作翔
2006年日本エースピジョン賞全国1位
総理大臣賞に替わる協会賞全国優勝

さて世界的銘鳩‘アスダイフ442(モントーバンN3位、ボルドーN4位、モンデマルサンN8位を含め長距離レース1%内入賞6回)’の孫鳩で手にした前回(絢絢)と系統的に異なるものの、「対長距離」という面では共通しているかもしれない。父親は2006年クラウン賞受賞のポイントゲッターの東海・三重合同CH総合優勝鳩‘啓啓(ケイケイ)’に2009年の東海CH総合2位‘祥祥(ショウショウ)’をクロスした、いわば「CH×CH」で、系統的に隠し味として少々ヤンセンが絡んでいるとはいえ、ブリュッフェマン兄弟の基礎鳩‘オード62’にヘイゼルブレヒトのバルセロナIN優勝鳩にして、2分の1ファンブリアーナの‘ローレアート・バルセロナ’と、オランダ、ベルギー長距離界の名門血統を軸に構成されている。

一方の母親は異血として高山鳩舎に迎えられ、ダックスにINシングル入賞2回(2002年に5位、2003年7位)を果たした怪物‘スーパーダックス’、それにフェルテルマン父子作翔の‘ペルピナンクィーン(2007年ペルピニャンIN優勝)’とで作出されたメスで、父親同様に「CH×CH」といった配合だ。後者のペルピナンクィーンの大本である ‘ローイ50(サンバンサンN8位)の血は、バルセロナIN優勝(バルセロナキム)をはじめ、本場・ヨーロッパのインターナショナルレースにおいて爆発的な威力を発揮。その突出した成績からオランダの伝説的CHブリーダーとして称えられているのは有名な話である。

単羽飛翔能力、そして展開不問で切れ味を発揮するその特性は、日本国内でも当たり、東日本稚内GNをはじめ、関東三大長距離レースで総合シングル鳩を量産! 国内外を問わずに長距離レースで飛ぶ。高山氏がこの母親を導入したのは、まさにそれが理由だった。

果たして長距離の名門血統で固められた「14SA07169」は、成績的にCHでピークを迎えていることからも、然るべき能力を発揮したといって過言ではない、しかもヤンセンがスパイスとして効いたのだろう、威力の幅を中距離にまで広げている。一方展開面では、Rg、地区Nは実力戦に対しCHは超がつく耐久戦と、異なりながらも入賞率をみてわかるように全く持ってブレていない。まさに万能型オールラウンダーだ。

かくにも今回の日本エースピジョン賞全国1位を獲得したことで、高山氏は「超銘鳩作り」というゴールにたどり着いた。今まで味わったことのない猛禽類の襲撃を乗り越えての受賞だけに、喜びは前回以上であることは言うまでもない。名称も決まった。高山氏は自鳩舎を代表するようなCHには必ず親族の名前にちなんだ愛称をつけるようにしている。「14SA07169」に付けられたのは、孫娘の一文字を並べて「咲咲(ショウショウ)」。移転してから8年、高山氏は草木も生えなかったこのユートピアに見事大輪の花を咲かせた。

平成27年度日本エースピジョン賞全国1位

咲咲(ショウショウ)
14SA07169 PBW ♀ 高山初夫鳩舎作翔

2015年
日本エースピジョン賞全国1位 ベルギー王立愛鳩家協会会長賞中部地区2位 会長賞東海連盟2位
東海連盟主催Rg2,514羽中総合36位 地区N1,390羽中総合24位 CH384羽中総合2位

日本AP賞1位

Father Grandfather
啓啓(ケイケイ)
04SA14884 BC 高山初夫鳩舎作翔
06年東海・三重CH総合優勝
ブリュッフェマン兄弟の基礎鳩オード62近親の孫
Grandmother
啓啓祥祥(ケイケイショウショウ)777
09SA02777 B 高山初夫鳩舎作
祥祥(ショウショウ)
08SA01705 B 高山初夫鳩舎作翔
09年東海CH総合2位
ファンブリアーナの銘種鳩ジュウェルの孫
Mother Grandfather
スーパーダックス
B98-3283837 BCWP マルク・レルヌート作
02年ダックスIN14756羽中5位、03年同IN19420羽中7位
孫/10年日本エースピジョン賞全国1位
Grandmother
ドーターペルピナンクィーン530
09HA04530 BCWP 一文字ロフト作
全姉妹/10年茨城地区N総合優勝
全兄弟の直仔/12年ジャパンカップ総合9位
全兄弟の孫/14年会長賞、16年東日本稚内GN総合優勝
ペルピナンクィーン
NL05-1230818 RC フェルテルマン父子作翔
07年ペルピニャンIN優勝
ローイ50の筋
孫/14年東日本稚内GN総合8位