‘二刀流’で進化を遂げたかつてのヒーロー 小沢幸夫鳩舎
■小沢幸夫鳩舎(埼玉吉川連合会) 〒270-0114 千葉県流山市東初石3―103-127 Tel:04-7152-1360 かつて東日本CH史上初の当日帰りで制したヒーロー・小沢幸夫氏は、09年に江戸川連合会から鳩レース王国‘埼玉連盟’の傘下である埼玉吉川連合会に移籍を果たす。そして10年にGPを制し、今春にはメイン中のメイン・地区Nで総合優勝を達成した。2羽とも日本屈指のレースマンとして名を馳せ、現在鳩レースの本場・ベルギーで戦う海外組・宮下 博氏の飛び筋。中でも今回は同氏の基礎鳩‘ミッシェル’の孫鳩にして世界的銘鳩をあまたに輩出してきたジョルジュ=カルトースの代表鳩‘ド・リモージュ’の緩やかな近親交配による成果だ。そもそもは、前述の東日本CH総合優勝鳩‘サンセットウィナー’をベースに練り上げてきたラインで戦っていた。しかし新たな飛び筋を手にしたことで、小沢氏はレースマンとして円熟期を迎えたと言って過言ではない。
宮下 博氏の飛び筋で再び連盟制覇!
1975年、世界に誇る伝統の長距離戦、東日本CHを当時史上初の当日帰りで制した小沢幸夫氏(埼玉吉川連合会)。その彼が2009 年に30年以上慣れ親しんできた江戸川連合会から現在の埼玉吉川連合会に移籍し、わずか3シーズン目―― 2010年の埼玉ブロック連盟GPで総合優勝したのは記憶に新しい。あれから4年。今春、小沢氏は移籍後2度目となる総合優勝を果たす。しかも今度は中距離の華・地区N! プロフェッショナルが集う鳩レースのメッカ・埼玉連盟の全レースマンが狙っていると言って過言ではないメイン中のメインでの勝利だ。
殊勲のヒロインは前回と同様に本場・ベルギーで戦う宮下 博氏の飛び筋。といってもベルギー長距離界の巨匠――ロジャー=フロリゾーネ氏の‘フレディ(1985年バルセロナゴールドウィング賞受賞)’とマルセル・アエルブレヒト氏の‘パトロン(2003年KBDBナショナルエースピジョン賞長距離部門1位)’を生み出した銘ブリーダー‘スーパー・クヴェーカー’の直系とで作られたGP総合優勝鳩‘YOグランプリウィナー’と全くの別物で、むしろ宮下氏という視点で見れば、今回の地区N総合優勝鳩――‘YOナショナル・トップレディ’の方が本筋だと言えよう。
ヒロインの父方祖父にあたる‘ミッシェル(モントーバンN入賞)’は同氏のベルギーにおいての基礎鳩。系源(ステッケルボード系)が同じであり、かつ‘バルセロナランボーⅡ(バルセロナIN優勝)’、‘ユーロダイアモンド(07年オリンピアード超長距離部門1位)’といった歴史的銘鳩を生み出してきたジョルジュ=カルトースの‘ド・リモージュ(リモージュN優勝)’の血も流れる‘YOナショナル・トップレディ’の母鳩‘レツルコ493’とカップルを形成し、宮下氏の下で数々のチャンピオン、秀逸なブリーダーを輩出してきた。 小沢氏自身、この‘ミッシェル’の 筋がある鳩友の下で結果を残していたことで、かねてからこの血に注目していたという。そして11 年、その直仔にして宮下鳩舎の種鳩を担っていた〝連太郎〞のトレードに見事成功。くわえて同年の12 月には前述の‘レツルコ493〞も手にするチャンスに恵まれ、すでに相性の良さを耳にしていた小沢氏は導入をすぐさま決め、自鳩舎に受け入れた。そして翌年、この2羽は必然の如くペアを組むこととなる。
2つの飛び筋のせめぎあいが生むパワー
かくにも配合2年目という早いタイミングでブレイクした形だ。しかも同級生の大野 操氏(常南連合会)でも「ミッシェル×レツルコ493」の孫鳩に前述の〝YOグランプリウィナー〞 をクロスしたメス鳩の直仔が、千葉ブロック連盟のGPで総合 13 位、平成千葉連盟においては2位に輝いたという。この2つの大きな成果に小沢氏が強い手ごたえを感じたのは言うまでもない。
「4年前のGP総合優勝を機に宮下(博)さんの系統の割合が多くなっていきました。今回の地区N、そして仲間の結果でさらにその傾向は加速しそうですね」。
とはいえ小沢鳩舎の本筋――ファンブリアーナ、モナンで構成された自身のメモリアルバード、東日本CH総合優勝鳩‘サンセットウィナー’の血も負けてはいない。江戸川連合会時代最後のチャンピオンとなった第1回千友会GP総合優勝鳩‘サンセットGPクイーン号’や2007年にゴールドエクセレントピジョン、2008年にCH鳩の認定を勝ち取った銘鳩‘サンセット・ダブルマークウィナー号’、そして2012年春の埼玉Rgで総合優勝に匹敵するスピードで帰還しながらも入舎に手こずり総合6位、翌年のGPで総合8位に入賞を果たした スーパーチャンピオン‘サンセットスーパーエンジェル’など数多くの銘レーサーを誕生させている。
鳩王国・埼玉連盟において総合優勝を経験した2010年以降、総合シングル入賞を外した年はない。その原動力は宮下輸入系との邂逅により生まれたサンセットラインとの切磋琢磨――。飛び筋のせめぎ合いが小沢氏に勝利の循環をもたらしたのは間違いない。かくにもこの‘二刀流’で日本鳩界かつてのヒーローは更なる進化を遂げた。
2014年春埼玉連盟地区N700K総合優勝
YOナショナル・トップレディ
13KA39939 DC ♀ 小沢幸夫鳩舎作翔
2014年春
埼玉連盟地区N5,304羽中総合優勝(実距離694.983K/分速1243.261m)
Father | Grandfather |
B05-9112352 DC 宮下 博鳩舎作 元種鳩 | ミッシェル B00-9129555 B ファンデルエッケン=ミッシェル作翔 02年モントーバンProv.2,929羽中28位 カルトース、ステッケルボード系 |
Grandmother | |
ラ168 B01-4221168 DC マルセル=ファンデナベール作 クリス=ヘベレクト作(ラステレーヌSN5,520羽中優勝の全兄弟/ダックスIN6位の異母兄弟)×ラ240(ペルピナンIN7位の母/ダックスIN2位の祖母) 孫/07年ブールジュN9位相当(失格) 兄弟./02年リモージュN1歳鳩部門2位 |
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Mother | Grandfather |
レツルコ493 B07-9047493 B ダニー=レツルコ作 孫/13年連合会エースピジョン賞2位 |
B01-9128204 ダニー・レツルコ作 ステッケルボード系 カルトースのド・リモージュ直系 |
Grandmother | |
B05-2004752 エリック=リンブルグ作 バルセロナN優勝の直仔×ラステレーヌSN2位(ベジエN3位の娘/ヤンセン、ファンネの混成系) 妹/ラステレーヌSN2位 |
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宮下 博ベルギーロフトラインの代表鳩
サンセットラインの代表鳩