椿山荘での再会は最高の形で―― 遠藤 宝鳩舎

椿山荘での再会は最高の形で―― 遠藤 宝鳩舎

■遠藤 宝鳩舎(富嶽連合会)
〒410-0318 静岡県沼津市平沼900-1 エムステージ神尾105号 ℡:090-1814-5861

遠藤 宝鳩舎

2007年11月、遠藤 宝氏は椿山荘にて開催された「全国著名愛鳩家の集い」に出席したことで、今までの鳩レースに対する世界観が180度変わってしまった。余りにも華やかでゴージャスなセレモニー、かつここで出会った神谷 中氏の存在が大きく影響し、照準を今までの東日本CH、GNから 500K、700K、900K――全国タイトル「地区CH賞」、かつ「三賞」狙いへと一新する。がしかし、鳩舎移転、種鳩整理という問題が発生し、2009年以降は規定クリアに止まってしまう…。2011年には病に倒れ、2ヶ月もの間入院生活を送るはめに。若鳩の調教に大きく後れをとったのはいうまでもない。そして迎えた2012年春、遠藤氏の情熱はこれら逆境を全てはねとばした。静岡東地区Nと桜花賞にて総合優勝、後者にいたっては中部3地区をも制し、入賞率はなんと0.7台をマーク! 横地光彦氏、木島茂樹氏の銘血パワーの助力を得て遠藤氏はついに日本鳩界の頂きへと登りつめるチャンスを手に入れた。

椿山荘で知った新世界!
鳩レースにこんな華やかな世界があったのか――。
総勢400名超! 東京都文京区にある「椿山荘・オリオンの間」にて開催される「全国著名愛鳩家の集い」は、日本鳩レース協会と日本伝書鳩協会の垣根を超えた真の日本一を決めるビッグイベントだ。2007年11月、地区CH賞を獲得しこの一大セレモニーに足を運んだ遠藤 宝氏は、カルチャーショックを受ける。もとは東日本CH、GNに照準を絞る超長距離フライター。地区CH賞は当時の遠藤氏にとって全く別のベクトルにあるタイトルだった。では何が獲得に駆り立てたのだろうか。それは師匠であり、鳩友でもある横地光彦氏(三賞6回の静岡連盟を代表する強豪)より「地区CH賞を獲って椿山荘に行こう」という強いオファーがあったからである。
話は聞いていたが、その規模とゴージャスさは想像をはるかに越えるものだった。かつ出席者も雑誌で見たような有名人ばかり! 驚きの連続だった。そしてこの煌びやかな時間の中で、1人のフライターと出会う。それは西の横綱「東海連盟」の最優秀鳩舎賞、かつ地区CH賞を獲得し、当時スーパールーキーとして注目されていた神谷 中氏だった。同じ横地鳩舎に師事する仲ということもあり、2人はすぐに意気投合。管理論、作出論、どれも遠藤氏にとって斬新で刺激的なものばかりだった。
「神谷さんはとにかくスゴイの一言。あれだけの鳩に一生懸命なのだから、そりゃあ強いわけですよ。だからこそ、私も頑張って少しでも彼に近づきたいと思いましたね」。
翌年、前年以上の入賞率で遠藤氏は地区CH賞をゲット。椿山荘の檀上で再会を果たすも、その時神谷氏は全日本優秀鳩舎賞――シルバー賞に。彼の三賞受賞に対し、遠藤氏は心から祝福した。が――。

「心のどこかでやりきれない自分もいましたね。彼との差はなんなのだろうって。考えた末、気付いたことは基本的なことでした。どれだけ鳩に熱くなれるか、一生懸命なれるかということだったんです」。

かつこの年、神谷氏を含め日本鳩界を代表するフライターたちをメンバーとする「椿山会」が発足。「1年に1度最高のメンバーで最高の舞台で再会しよう」という会の趣旨が、遠藤氏にさらなるモチベーションをもたらす。  がここでそれに水を差すような出来事が起きた。諸事情により鳩舎移転、並びに種鳩の整理をしなければならなくなってしまったのである。2009年春シーズンは、今まで通りの場所、戦力で戦うことはできたが、遠藤氏の胸中は穏やかではなかったのは言うまでもない。だがここで彼は底力を発揮! 特別賞止まりだったものの、1シーズンに2発――中部3地区GPと静岡東桜花賞で見事総合優勝を果たし た。過去最高に近い成績を収めるも、やむなくここでのピジョンライフにピリオドを打つこととなる。 相次ぐアクシデントを乗り越えて  5月末、新しい環境での飼育が始まった。主力ブリーダーを失っての作出、そして猛禽類の巣での調教…。戦力ダウンはいわずもがな、もはやそれは三賞をおろか、地区CH賞さえ狙えるような状況ではなかった。失意の中でのリスタートとなったが、それでも彼の心は折れなかった。舎外にしろ、訓練にしろやれることをやれるだけやった。その姿、まさに勝負師! 移転1年目の春、夏っ子、かつ少数羽数で臨みながらも、またもや2発――GPと桜花賞で連盟制覇を成し遂げ、地区CH特別賞も獲得。椿山荘行きのキップを獲得し、約束の再会を果たす。

「周りからもこの状況では無理じゃないかと言われていた。それでも情熱をもって一生懸命やれば道は拓けると信じていました。それが、ある程度の結果がでて…。自信がもてた1年目でしたね」

だがここでまたもや逆風に見舞われる。それは2011年6月――東日本大震災の影響でレースが自粛となり、来年に向けて若鳩の調教に入るまさにそのタイミングで起きた。遠藤氏は病に倒れ、2ヵ月ほど入院を余儀なくされる。その間の管理について餌と水だけはなんとか鳩友に頼み対応できたものの、舎外、訓練などの調教面は一切手つかず…。さらに災難は続き、復帰後、鳩舎に足を運んでみたら種鳩の大半がイタチにやられていたのだ。ただ選手鳩が100羽ほど残っていたのが不幸中の幸いだったと言えよう。

「選手鳩はほぼ無事だったので、落ち込んだりはしなかったですね。しかし出遅れたのは事実。一昨年以上に一生懸命やろうと思った」

遅れた分を取り戻すために急ピッチで若鳩の調教に入った。舎外が集団で飛ぶようになると個人訓練へ。ここで普段なら訓練と舎外を併用して行うのだが、かつてとは違い今は猛禽類が多く出没する場所である。ここ2年間の経験を生かし、被害を最小限に抑えるため訓練主体のカリキュラムを採用した。しかもペースと回数はかなりハード。それはスパルタといっても過言ではないほどだった。だが念には念を入れ、秋は若鳩を一切使わず、2009年、2010年生まれの成鳩だけで戦う。そして今春、例年より多い羽数、充実した戦力で挑むことができた。  遠藤氏は予定通りRgからしかけていった。調整法は訓練主体から舎外中心へと切り替え、分離で持ち寄った。結果、総合4位、5位、7位。連合会ではワンツースリーの固め打ち! 地区CH賞獲得に向け、順調なスタートを切る。次戦の地区Nでは総合優勝、3位、4位、5位、9位、11位のまたまた固め打ち。更なる好結果を生んだ。

アタマのトリはマルセリスブームの立役者として知られる木島茂樹鳩舎より導入した「スプリント(03年オリンピアード短距離部門代表鳩)」、「ドンケレ18(3年連続アスダイフエースピジョン賞1位)」の血脈に自鳩舎の中部3地区GP連盟4位鳩(横地系)をクロスしたメス。両親ともに遠藤鳩舎にとって主力系統であり、スピードに長けた血統で、かつ「マルセリス×横地系」は、中距離を狙う上で鉄板の配合式だった。

GPでは3大会連続連盟制覇を狙うも、Rg、地区Nと勢いがあったこともあり、あえて調整法を変えずに臨んだ。が総合24位、連盟では7位と不本意な結果に終わる。これを受け、ファイナルの桜花賞では管理法――訓練主体に戻した。 「GPでの惨敗もそうですが、舎外も飛ばなくなったこともきっかけになりました。確実に1時間飛ばす。これをテーマにあえて雨の日に訓練したこともありました」。  びっちりと飛ばし込み仕上がったレーサーは、ファイナルの桜花賞で勇躍する。同日に開催された東海CHが当日入ったという情報から、夕刻には帰ってくると期待していたが、それは叶わず。だが翌日早朝、たて続けに2羽帰還させ、連盟ワンツーを飾る。なおかつ中部3地区で堂々トップ、そして総合3位に輝いた。

総合優勝鳩「宝アキ」は、地区N同様に自鳩舎鉄板の配合式――を少しアレンジして創出したトリだった。本来、長距離バードを作る方式は、静岡県下最強の超長距離ブリーダーとして知られる「中野400号(東日本CH1100K静岡連盟優勝・ファンブリアーナ系)」の筋に長距離タイプの横地系をかけるというのが定石なのだが、横地系は横地系でも「マウス(静岡農水賞600K総合優勝・ローセンス系)」、「オートマティック(静岡地区N総合優勝・ヤンセン系)」といったスピード色の強い血統をプラス。常に3地区の桜花賞でいいところにはいるものの、どうしても抜けきれない。そこで切れ味ありの長距離“スピード”バードを意識して作出されていた。

それに対し総合2位鳩――3地区では総合3位だったこの俊鳩は、まさに鉄板の配合式。「中野400号」に「イワン(ボルドー、モントーバン各N優勝)」、「テーレン(サンバンサンN3位)」がかかっており、優勝鳩と同じ横地系でも長距離に特化した交配で創出されている。ちなみにこのメスはGP連盟9位、地区Nでも総合11位と入賞を重ねており、今年のベルギー王立愛鳩家協会(KBDB)会長賞東部地区1位に選出された。  終わってみれば、中距離、長距離のメインレースで総合優勝。地区CH賞の入賞率も0.7台とこれは全国で3番目の数値である。むろん、自身3度目の地区CH賞はもちろんのこと、さらにその先にある全日本優秀鳩舎賞の選出、かつ総合優勝2発というインパクトがプラスに働けば日本一――クラウン賞受賞の可能性を秘めるほどだ。

「正直この環境でこれだけの成績を出せたことに充分満足しています。モチベーションをくれた神谷さんと椿山会の仲間、そして代落ちでもこれだけの力を発揮できる銘血を提供してくれた横地さんと木島さんには、感謝の気持ちでいっぱいですね」。

かくにも約束は果たされた。11月11日、遠藤氏は椿山荘において神谷氏と、そして最高の仲間たちとの再会を果たす。しかもそれはゴールド賞受賞という形で――。いかなる過酷な環境に置かれても情熱をもってかつ一生懸命やれば、鳩は応えてくれる。夢を叶えることができる! 遠藤氏のピジョンスピリットが生んだ産物は、日本鳩界に大きな夢と希望を与えるものとなるだろう。

2012年春中部3地区(静岡東・静岡東・愛知静岡)連盟主催桜花賞総合優勝

宝アキ
11PB00691 シャーリー ♀ 遠藤 宝鳩舎作翔
2012年春
中部3地区連盟主催桜花賞1,001羽中総合優勝 (実距離:918.479km/分速:1016.879m)
静岡東連盟主催Rg500K1,334羽中総合22位

 

宝アキ 

Father Grandfather
08PB04889 B 遠藤 宝鳩舎作翔
2009年静岡東桜花賞総合3位
07DA47169 遠藤 宝鳩舎作
中野400号(東日本CH静岡連盟優勝)×ナショナルテン(2003年静岡地区N総合優勝/マウスの孫)
直子/静岡東菊花賞総合優勝
Grandmother
04PA04931 B 横地光彦鳩舎作
バズーカー(スーストンN優勝、ダックスN3位)の娘
全妹/サクラ(2005年静岡地区N総合優勝)
直子/中部3地区GP静岡連盟2位
Mother Grandfather
08PB04974 遠藤 宝鳩舎作翔
中部3地区GP連盟11位 東日本CH1100K連盟7位
07FB00309 遠藤 宝鳩舎作
中野400号×アテネ(2004年中部3地区GP総合優勝/ド505の孫)
Grandmother
03PA08070 スレート 横地光彦鳩舎作翔
GP総合17位、桜花賞総合15位
横地ヤンセン781の直子×オートマティック(1999年静岡地区N600K総合優勝)の娘

2012年春静岡東地区N600K総合優勝

宝ナショナルⅡ
10PB02227 BC ♀ 遠藤 宝鳩舎作翔
2012年静岡東地区N811羽中総合優勝

宝ナショナルⅡ  父)
09LB14194 B 木島茂樹鳩舎作
ドンケレ18の直子×ブラウスプリント(スプリント直子)の娘

母)
08PB04859 遠藤 宝作翔
中部3地区GP連盟4位
 祖父)
 02ZA33717 スレート 横地鳩舎作
    ナショナルテン従兄弟×アラシ母
 祖母)
 00PA03246 BC 横地鳩舎作翔
 静岡地区N総合7位、12位
(プロフェッショナル×ド10)×バズーカ娘

2012年ベルギー王立愛鳩家協会会長賞・東部地区1位

10PB02189 B ♀ 遠藤 宝鳩舎作翔
2012年春
ベルギー王立愛鳩家協会会長賞東部地区1位
中部3地区桜花賞1,001羽中総合3位
中部3地区GP静岡東連盟9位
静岡東地区N811羽中総合11位

2012年ベルギー王立愛鳩家協会東部地区1位 父)
06PB04949 BP 遠藤 宝鳩舎作翔
静岡東桜花賞総合15位
中野400号直子×イワンの近親

母)
08DA54655 S 横地光彦鳩舎作
テーレン直子×ドンケレペルピナン娘
全兄弟/2009年総理大臣賞静岡連盟1位

遠藤 宝鳩舎2012年春の成績
★中部3地区連盟主催桜花賞900K 1,001羽中総合優勝(連合会優勝)、3位、24位
★中部3地区連盟主催GP700K 1,322羽中総合24位(連合会優勝)、26位、31位、46位
★静岡東連盟主催地区N600K811羽中総合優勝(連合会優勝)、3位、4位、5位
★静岡東連盟主催Rg500K 1,334羽中総合4位(連合会優勝)、5位、7位、21位、22位
★個人タイトル愛鳩の友誌主催地区CH賞 全日本優秀鳩舎賞(ゴールド賞)、
静岡東連盟最優秀鳩舎賞
★鳩賞ベルギー王立愛鳩家協会会長賞東部地区1位、静岡東連盟最優秀鳩