王国史上初の快挙が導く‘日本一’2冠! 鈴木 隆鳩舎
■鈴木 隆鳩舎(埼玉北葛連合会・翔道4段)
〒344-0121 埼玉県春日部市上柳489-3 Tel:090-5821-3316
鳩レース王国として知られる埼玉連盟でまさかこのような奇跡が起こるとは誰が想像できただろう。5レース連続総合シングル――。レース歴45年目を迎えたベテラン・鈴木 隆氏(埼玉北葛連合会)が果たしたこの史上空前の快挙は、ブロックチャンピオン賞、クラウン賞といったタイトルに当然の如く導いた。そして平成26年1月12日――総合表彰式内にて年間の日本一〝日本最優秀鳩舎賞〞にも選出! GN専門鳩舎だった彼がなぜここまで総合力を高めることができたのか。日本一2冠という離れ業を成した鈴木氏。2013年の軌跡を辿る。
常にベストな成績を残せる管理
レース歴は昨年で44年を迎えた。鳩レースのメッカ・埼玉連盟において、第一線を走り続けてきたベテラン・鈴木 隆氏(埼玉北葛連合会)は、日本鳩界至高のタイトル〝三賞〞を意識したことで、5年前――2009年に急激な飛躍を遂げる。9000羽以上参加した地区Nで総合優勝を含めシングルに3羽入賞! かつ目標であった三賞の一峰〝シルバー賞〞に輝いた。
勝因は仕掛けるタイミング――分離の時期を200キロ後に早めたこと。もともとGN指向が強かった鈴木鳩舎は地区N以降になって初めて調教に熱を入れるのが常だった。むろんその手法は〝否〞ではない。抜群の安定感を生みだし、連盟優秀鳩舎賞はほぼ毎年絡んでいる上、狙いのGNでは幾度となく連盟一桁台入賞。連盟制覇にいたっては3度達成している。うち1998年には総合10位に輝いていた。
とはいえ、このチェンジが見事にハマり、二律背反の能力――〝安定感〞と〝切れ味〞を体現。三賞受賞という正解を手にしたことで、鈴木鳩舎の視線は〝クラウン賞〞へと向けられた。しかしそう簡単にいかないのが鳩レースの世界である。2012年こそ地区CH賞、日本優秀鳩舎賞の規程をクリアするも、〝実〞に結びつくことはなかった。
ただ理由はあった。鈴木氏はこの正解に改良の余地があると考え、あの手、この手と試行を繰り返していたのだ。彼の考える到達点とは、地区CH賞、日本優秀鳩舎賞の規程レース全てで〝切れ味〞を発揮させること。2009年のように地区N――1レースだけでは〝シルバー賞〞より上にいけないと考えたのである。理想を追い求めた上での低迷であった。
結果的には不遇な3年間となったものの、その経験こそが2013年への試金石となる。手に入れたのは、常にベストな成績を叩き出せる夢のようなスタイル。200キロ後に分離をかけるというのは従来通りだが、シーズン前の1月から連合会訓練が始まる前まで目一杯飛ばし込み、いつでも勝負できるコンディションに一旦仕上げる。その後、3月上旬の300キロまで舎外回数を極端に減らし、抑え気味の管理に180度チェンジ! Rg以降の中距離3連戦はオスこそ訓練を実施するなど鍛えこんだが、メスは長距離勝負という思惑から鳩なりで調整。別々のカリキュラムを組むことでコンディションを一定化をさせない――各鳩のブレイクするタイミングをずらすことで、オールラウンドに戦えるよう図ったのだ。
埼玉連盟史上初〝5レース連続総合シングル〞
プラス、新井 繁氏(埼玉北辰)直伝の投薬法(レース鳩誌13年4月号参照)も採用したことで狙い通り――いやそれ以上の結果を生み出す。Rg、600キロ、地区N、GP、そして桜花賞と自身が参加した春の総合レース全てでシングル入賞を達成! オス、メス同様に訓練集中型に切り替えて臨んだ桜花賞にいたっては総合優勝、かつ併催の東日本CHではD地区優勝に総合3位と堂々たる成績を叩き出した。かくにも〝5レース連続総合シングル入賞〞はむろん鳩レース王国・埼玉連盟において史上初! 連盟最優秀鳩舎賞は歴代最高ポイントで、地区CH賞も全国トップの入賞率でそれぞれ獲得し、昨年新設された〝ブロックチャンピオン賞〞もダントツの成績で受賞を決める。
あらゆる総合タイトルの〝1位〟となった鈴木氏は、昨年12月1日に開催された「全国著名愛鳩家の集い」において自身の本懐である春の日本一〝クラウン賞〟を堂々受賞。壇上での発表直後での祝辞では、感動の余り何を話したか覚えていなかったという。
宿願を叶えた男には更なるビッグタイトルが待っていた。クラウン賞受賞より1週間前に開催された秋季Rgレース。ここで鈴木鳩舎は成鳩2羽を5%内に帰し、12月16日、「レース鳩誌」12月号の発行をもって、年間タイトルである‘日本優秀鳩舎賞’の受賞を決める。春の勢いから秋も順調かと思われた。しかし。日本一へのプレッシャーのせいか、鈴木鳩舎は普段はやらないような日――開幕戦前日、かつ台風が通過した翌日に個人訓練を実施。近場からだったにもかかわらず、気流の乱れによるものなのか、ほとんどの鳩が帰らなかったのだ。翌日にこそ9割以上揃ったものの、時すでに遅し。これでペースを大きく崩し、200キロ、300キロは見せ場らしい見せ場は一切作れなかった。秋季Rgも〝らしくない〞戦いぶりとなったり、実はなんとか逃げ切りに成功しての受賞であった。とはいえ入賞率は0.04975。仲間が調べた情報では充分年間の日本一‘日本最優秀鳩舎賞’も射程圏内にある。そして今年1月12 日の総合表彰式にて、日本優秀鳩舎賞のランキングが壇上でそれぞれ発表。年間の日本一が決まる運命の瞬間、用意されたクラッカーが割れ垂れ幕には日本最優秀鳩舎賞--鈴木鳩舎の名前が書かれてあった。かくにも「中田幸雄」、「新井 繁」に次ぐ、埼玉連盟史上3人目となる日本一――〝日本最優秀鳩舎賞〞の受賞となった。
体現した殊勲の源鳩2羽
約3ヶ月間コンディションをキープし続けさせるという荒業に耐え、なおかつ‘クラウン賞’、‘日本最優秀鳩舎賞’という日本一2冠という‘答え’を導き出したのは、鈴木氏のオリジナルライン――〝スプリングストーム(埼玉連盟知事賞600キロ総合優勝)〞と〝エースピジョントリプル(埼玉連盟エースピジョン賞1位、総理大臣賞連盟1位、連合会最優秀鳩)〞という2大源鳩の血で形成されたレーサー群だ。
前者は自身にとって初めての総合優勝をもたらしたメモリアルバードで、孫鳩に〝キャノンボーイ(埼玉連盟知事賞600キロ総合優勝)〞を輩出。そのバックボーンは中距離系ではなく、89年東日本稚内GN連盟優勝鳩〝87KA38761(ファンブリアーナとデルバールの混成系)〞である。しかも鈴木鳩舎の本懐――GN用に練りに練り上げ、ゴールドエクセレントピジョン認定鳩など、代々優秀な1000キロバードを生み出してきた、最も古く、そして愛用されてきた飛び筋だ。なお〝5戦連続総合シングル〞を体現したレーサーには〝ナショナル6(地区N総合6位)〞以外全てこの〝スプリングストーム〞の銘血が流れている。
後者の〝エースピジョントリプル〞もまた鳩舎を改築して初めて迎えた2003年春に活躍したメモリアルバード。その改築に携わった鳩友・宮 唯矩(ただつね)氏の地区N総合優勝鳩(マルク=フェルシェルデ系)の末裔にあたるこのトリは、系統として2009年に地区N総合優勝を生み出し、シルバー賞の原動力になったのは記憶に新しい。今回もGP総合4位、地区N総合6位、桜花賞総合10位といったポイントゲッターがその同系にあたるなど、然るべき威力を示したと言えよう。
そして、〝スプリングストーム〞と〝エースピジョントリプル〞――源鳩2羽の血を直接に絡めて誕生させたのが、東日本CH総合3位にして埼玉連盟桜花賞の総合優勝鳩〝CHメモリアルクイン〞だ。後者の同系にして、かの稚内レースオール関東最高分速鳩〝美聡稚内号〞の因子まで織り込まれたこのヒロインは、1000キロ狙いで創出されたものの、埼玉連盟NPO賞600キロでも総合14位、地区Nでも10%内入賞とオールラウンドでその実力を証明。かくにも翔歴、血統と共にポイントゲッターの中でナンバーワンのトリだと言えよう。
経験則からあみだした斬新な管理を、月日をかけて磨きあげた系統が応える。王国史上初の‘5レース連続総合シングル入賞’〝を体現し〝クラウン賞〟と〝日本最優秀鳩舎賞〟のダブル受賞――日本一2冠は、鳩と人、それぞれが熟成された末、果たされた偉業であった。
日本一2冠に導いたポイントゲッター
CHメモリアルクイン
11KA23097 B ♀ 鈴木 隆鳩舎作翔
2013年春
東日本CH6,589羽中総合3位(D地区1,984羽中優勝)
埼玉連盟桜花賞1,456羽中総合優勝
Father | Grandfather |
ナショナル7 08KA35983 B 鈴木 隆作翔 09年埼玉連盟地区N9,401羽中総合7位 |
00KA02688 BC 鈴木 隆作 全兄弟/キャノンボーイ(03年埼玉連盟農水賞600K総合優勝)の母 |
Grandmother | |
06KA19377 B 鈴木 隆作 上記キャノンボーイ×エースピジョントリプル(埼玉連盟エースピジョン賞、総理大臣賞埼玉連盟1位、連合会最優秀鳩) |
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Mother | Grandfather |
増田1100K 08-099873 B 増田典子作 |
美聡稚内号 06-029267 B 山口邦夫作 08年関東支部連盟GV1100K総合優勝(総参加2,026羽中最高分速) |
Grandmother | |
07-060760 B 山口邦夫作 SC500K総合4位 | |
その他のポイントゲッター
鈴木 隆鳩舎の成績
2013年秋季シーズン | |
★埼玉連盟主催Rg400K | 9,331羽中総合25位、64位 |
2013年春季シーズン | |
★埼玉連盟主催桜花賞1000K | 1,456羽中総合優勝、10位、17位 |
★埼玉ブロック連盟主催GP700K-800K | 629羽中総合4位、14位 |
★埼玉連盟主催地区N700K | 3,492羽中総合3位(連合会優勝)、6位、23位、33位 |
★埼玉連盟主催NPO賞600K | 4,204羽中総合5位(連合会優勝)、9位、14位 |
★埼玉連盟主催Rg400K-500K | 8,958羽中総合2位(連合会優勝)、11位、13位、17位、32位 |
★個人タイトル | |
日本鳩レース協会主催日本最優秀鳩舎賞 日本鳩レース協会主催ブロックチャンピオン賞 埼玉連盟主催最優秀鳩舎賞(※史上最高得点) ピジョンジャーナルクラブ主催クラウン賞 愛鳩の友社主催地区CH賞 |